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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻3号

2021年03月発行

文献概要

臨床報告

生来健康な若年者の片眼に発症した内因性細菌性眼内炎の1例

著者: 有松真央1 芳野高子1 松田英伸2 松岡尚気2 黒澤史門2 福地健郎2

所属機関: 1新潟県厚生連佐渡総合病院眼科 2新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻感覚統合医学講座視覚病態分野

ページ範囲:P.308 - P.312

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要約 目的:生来健康な若年男性で,非感染性ぶどう膜炎との鑑別が困難であった内因性細菌性眼内炎の症例を経験したので報告する。

症例:18歳,男性。皮膚潰瘍の治療中に突然の右眼の眼痛・視力低下が生じた。

所見:右眼視力は指数弁で,前房に前房蓄膿,線維素析出があり,強い硝子体混濁を認めた。左眼に異常を認めなかった。非感染性ぶどう膜炎と感染性眼内炎との鑑別に難渋したが,抗菌薬硝子体内注射に反応し,皮膚病巣からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されたため,内因性細菌性眼内炎を強く疑い,速やかに硝子体切除術を施行した。術中に採取した前房水からは細菌,真菌ともに培養されず,MRSAも検出されなかったが,硝子体手術後に炎症所見と視機能は改善した。

結論:眼内炎の診断では,感染性か非感染性かの鑑別は非常に大切である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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