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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著
上眼瞼手術後に長期経過して生じた角結膜障害の臨床的特徴
著者: 石本敦子1 佐々木香る1 嶋千絵子1 髙橋寛二1
所属機関: 1関西医科大学付属病院眼科学講座
ページ範囲:P.543 - P.547
文献購入ページに移動症例:年齢は67.0±5.7歳で,全例難治性再発性の角結膜障害として近医より紹介された。5症例中4例は美容形成外科にて埋没法重瞼術,1例は幼少期に上眼瞼手術の既往があった。
所見:角膜所見は潰瘍,白色小隆起性病変,擦過創様の線状角結膜障害(角膜障害に対して治療用コンタクトレンズを使用した例では装用中止後に出現),上輪部炎,糸状角膜炎と多様であったが,全例角膜上半分の部位に位置していた。上眼瞼は硬く,翻転が困難で,上眼瞼結膜には陥凹を認めたため,上眼瞼結膜の縫合糸や瘢痕性肉芽腫が原因と判断した。発症は眼瞼術後平均28±13年であった。全例,縫合糸が透明なことや出血により糸の検出が困難で,複数回の摘出試行を要した。重瞼術例の4例では縫合糸抜去により速やかに治癒し,幼少時眼瞼手術例は,保存的加療で上眼瞼肉芽腫の改善とともに角膜所見も治癒した。
結論:原因不明の再発性の角結膜障害をみた場合,疑うべき疾患の1つに重瞼縫合糸や瘢痕性肉芽腫による障害がある。再発する角膜上半分の部位の線状病変を含む多様な所見と上眼瞼結膜の硬化,結膜陥凹が特徴と思われた。注意深い問診と,複数回におよぶ上眼瞼の観察,治療用コンタクトレンズの中止,速やかな抜糸が診断と治療に肝要である。
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