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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著
眼球内に長期間鉄片異物が存在した眼球鉄錆症の1例
著者: 山本優一1 盛秀嗣1 山田晴彦1 久次米佑樹1 髙橋寛二1
所属機関: 1関西医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.555 - P.562
文献購入ページに移動症例:22歳男性。X年2月,仕事中に鉄片が右眼を直撃したためすぐに近医眼科を受診したが,眼内炎症が軽微で刺入口が明らかでなかったためか経過観察となった。同年9月,右眼の眼痛と羞明が増強し,10月に関西医科大学附属病院を紹介され受診となった。初診時視力は右1.2,左1.5で,右眼の角膜周辺部に白色線状混濁,水晶体表面に多数の細かい褐色の沈着物がみられた。右眼は硝子体混濁を認めたが眼底に異物は発見できなかった。病歴や検査所見から眼内異物を疑い,眼窩X線撮影とCT撮影を施行したところ,水晶体後方に異物と考えられる高吸収域を認めた。以上から,右眼眼内異物および眼球鉄錆症と診断した。右眼白内障手術併用硝子体手術を施行したところ,術中,網膜周辺部鼻下側に約8mm×3.5mmの鉄片異物を認めた。後囊切開を追加し,白内障手術の強角膜創から摘出を行った。術後1年目の右眼光干渉断層計は,続発性黄斑上膜,hyperreflective foci,interdigitation zoneの不鮮明化,フラッシュ網膜電図ではsubnormalな波形をそれぞれ認めたが,右眼矯正視力は0.9を維持していた。
結論:病歴や経過から異物飛入の可能性がある場合は,必ずX線撮影やCT撮影を行って眼内異物滞留の有無を判断する必要がある。眼球鉄錆症は鉄片異物除去後も視機能低下をきたす可能性があるため,慎重な経過観察が必要である。
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