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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻6号

2021年06月発行

文献概要

特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[4] 原著

外傷性毛様体解離に著明な浅前房を合併し治療に難渋した1例

著者: 森山芹香1 坂本理之1 昌原英隆1 前野貴俊1

所属機関: 1東邦大学医療センター佐倉病院眼科

ページ範囲:P.810 - P.817

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要約 目的:毛様体解離における部位の同定は超音波生体顕微鏡(UBM)や前眼部光干渉断層計(OCT)が有効であるが,設置している機関は少ない。今回,筆者らは外傷性毛様体解離に著明な浅前房を合併したために解離部位や範囲が同定できず治療に難渋した症例を経験したので報告する。

症例:33歳,男性。ラグビーの試合中に右眼を鈍的に受傷した。1週間後に当科を紹介され受診し,右眼視力は0.8,右眼圧8mmHg,水晶体の前方移動に伴う浅前房を認め,毛様体解離が疑われた。

結果:自然治癒を期待し経過観察したが,低眼圧の持続,視力低下,浅前房,脈絡膜皺襞の悪化を認め,受傷後1年半後に毛様体解離部分を正確に同定できないまま硝子体手術,経毛様体扁平部水晶体切除術,ガスタンポナーデを施行し,術後仰臥位安静の治療を行った。初回手術後,眼圧は8mmHgと依然低値であった。前房深度が正常化し隅角検査にて下方を中心に約90°に毛様体解離が同定できたため,二期的に眼内レンズ挿入および術中隅角鏡を用いた毛様体縫着術を施行した。手術3か月後,視力は1.0へと向上し,隅角は一部周辺虹彩前癒着を認めるものの,毛様体解離は改善し,眼圧は15mmHg,脈絡膜皺襞の改善が認められた。

結論:鈍的外傷が原因で発症した水晶体偏位を伴い著明な浅前房を合併した外傷性毛様体解離で,解離範囲の同定ができない場合は,治療に難渋する可能性がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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