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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
パラコート・ジクワット液剤(プリグロックス® L)による角膜化学外傷の1例
著者: 田村彩1 曽我部由香1 宇野敏彦2 都村豊弘1
所属機関: 1三豊総合病院眼科 2白井病院
ページ範囲:P.913 - P.918
文献購入ページに移動症例:79歳,女性。除草剤が左眼に入り,充血を主訴に受診した。軽度の点状表層角膜炎を認めるのみであったが,4日後に増悪を訴え再診した。角膜全面の上皮欠損,全周性の強い結膜充血と瞼結膜の偽膜形成を認めたが,疼痛の訴えはほとんどなかった。洗浄や偽膜の除去,抗菌薬の点眼,ステロイドの点眼と内服による治療を行ったが,所見の改善はみられなかった。受傷9日目に除草剤がパラコート含有と判明し,抗酸化作用のあるレバミピド点眼を追加した。数日おきに洗浄と壊死組織の除去を行ったが,上皮欠損は縮小しなかった。受傷20日をすぎてから徐々に上皮化した。経過中,前房内炎症や眼圧上昇はなかった。受傷40日頃に上皮欠損は消失し,角膜の実質混濁や内皮異常,知覚低下を生じることなく治癒した。最終矯正視力は1.2であった。
結論:パラコートによる化学眼外傷では,受傷直後は軽微な所見にもかかわらず,数日後に急速に組織壊死と炎症が増悪する特異的な経過をたどる。報告例は少なく,成書にも記載が乏しいため,化学外傷の初療時には注意が必要である。
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