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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
眼窩骨折を伴った眼窩先端部症候群の1例
著者: 宮澤和基1 恩田秀寿1 嶌嵜創平1
所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座
ページ範囲:P.953 - P.958
文献購入ページに移動症例:44歳,男性。自宅で家具を製作中に脚立から転落し,床に置いてあった鉄製パイプの側面に右眼を打撲し受傷した。初診時の所見として,視力は右(0.7),左(1.2),眼圧は右18mmHg,左17mmHg,右相対的瞳孔求心路障害陽性を疑い,眼球突出度は右27mm,左22mmであった。強制開瞼下でのHess赤緑試験で右動眼神経麻痺を認めた。また,眼窩CTでは右開放型眼窩下壁および内側壁骨折,眼窩内出血を認めた。右眼窩先端部症候群と診断し,受傷後2日目に入院した。抗炎症目的に副腎皮質ステロイド(ステロイド)の点滴静注,止血目的にカルバゾクロムスルホン酸の点滴静注,眼圧下降目的にアセタゾラミドの内服を開始した。ステロイドは漸減投与し,受傷後16日目には両眼の眼球突出度が23mmで左右差が消失し,視力は右(1.0)と改善した。眼球運動も改善傾向にあったが,右眼の上転障害が残存していたため右眼窩下壁骨折によるものと判断し,受傷後31日目に右眼窩下壁骨折整復術を施行した。その後の経過は良好で,受傷後60日目に自覚複視は消失していた。
結論:外傷を契機とした眼窩先端部症候群に対して,早急な薬物加療によって,視力の回復と自覚複視の軽減を認めた。
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