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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻7号

2021年07月発行

文献概要

特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

ボツリヌス治療中の本態性眼瞼痙攣患者のQOLとその影響因子

著者: 嶋田祐子1 大北陽一1 木村亜紀子1 岡本真奈1 五味文1

所属機関: 1兵庫医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.959 - P.965

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要約 目的:兵庫医科大学病院眼科のボツリヌス(BTX)外来に通院中の本態性眼瞼痙攣患者(EB)のquality of life(QOL)と,その影響因子について調査する。

対象と方法:対象は2019年10月からの4か月間にBTX治療を1年以上継続しているEB患者のうち,The 25-item National Eye Institute Function Questionnaire(VFQ-25)によるQOL評価が可能であった例である。QOLの影響因子として,年齢,投与回数,治療期間,EBの程度,遮光眼鏡とBTX治療に対する満足度(5段階評価)の関与を,重回帰分析を用いて検討した。EBの程度判定はJankovic評価スケール(重症度+頻度:0〜8点)を用いた。

結果:EB患者58例(平均年齢69.4歳:39〜83歳,男性12例,女性46例)で検討を行ったところ,VFQ-25は45.7〜85.8点に分布し,年齢は心の健康と,治療期間は眼の痛みの軽減と正の相関を認めた。EBの程度は一般的見え方,心の健康,自立で負の相関を認めた。遮光眼鏡の満足度は,一般的見え方,目の痛みの軽減で正の相関を認め,BTX治療の満足度は自立,運転,色覚を除く9項目で正の相関を認めた。

結論:BTX治療の満足度がQOLの改善に最も関与していた。EBでは遮光眼鏡も併用し,BTX治療を長く続けられることが重要である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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