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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻8号

2021年08月発行

文献概要

特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

血液透析患者で総胆管拡張と総胆管結石に続発したビタミンA欠乏症の1例

著者: 中田大介1 岡田浩1 島田佳明2 谷川篤宏3 堀口正之3

所属機関: 1豊川市民病院眼科 2藤田医科大学ばんたね病院眼科 3藤田医科大学眼科

ページ範囲:P.1105 - P.1110

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要約 目的:総胆管拡張と総胆管結石を有する透析患者にみられたビタミンA欠乏症の1例を経験したので報告する。

症例:65歳,女性。主訴は数か月前からの夜盲。2年前から消化器内科で総胆管拡張および総胆管結石を経過観察され,また近医にて血液透析中であった。視力は両眼とも(1.0),眼底には小白斑を認めた。ゴールドマン視野検査では異常なく,網膜電図(ERG)ではa波およびb波の著明な振幅低下を認めた。光干渉断層計(OCT)ではellipsoid zone(EZ)とinterdigitation zone(IZ)の不整を認めた。血清亜鉛は54μg/dlと低下し,血清ビタミンAは19IU/dlと著明に低下していた。総胆管拡張と総胆管結石患者に伴ったビタミンA欠乏症と診断し,ビタミンAの経口投与を開始した。血清ビタミンAは531IU/dlに上昇,夜盲の自覚も消失し,ERGも改善した。血液透析中であり,ビタミンAの蓄積を考慮し,漸減投与としたが最終視力は左右ともに(1.0)に保たれ,夜盲の再発はない。

結論:血液透析に伴う低亜鉛血症に加え,総胆管拡張と総胆管結石による胆汁酸の異常をきたし,ビタミンAの吸収障害により夜盲をきたしたと考えられた。透析患者ではビタミンAの投与にも慎重を要する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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