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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
角膜擦過物の検鏡が治療効果判定に役立った真菌性角膜潰瘍の1例
著者: 杉田丈夫1 土至田宏1 朝岡聖子1 市川浩平1 林雄介1 松崎有修1 平井麻紀1 太田俊彦1
所属機関: 1順天堂大学医学部附属静岡病院眼科
ページ範囲:P.1111 - P.1116
文献購入ページに移動症例:15歳,女性。毎日交換型ソフトコンタクトレンズ(SCL)の装用を開始も,翌月には頻回交換型SCLに処方変更となった。その際にレンズケア方法の説明はされなかった。同月中に右眼の視力低下,充血,眼痛,流涙,羞明が出現したため近医を受診し,アカントアメーバ角膜炎が疑われ順天堂大学医学部附属静岡病院に紹介され初診となった。右眼の初診時矯正視力は0.02,右眼の角膜中央部に混濁と浸潤を伴う角膜潰瘍を認め,角膜擦過物の培養検査と塗抹検鏡を行った。当科における検鏡で糸状菌を確認,入院のうえ抗真菌薬の点眼と点滴中心の治療内容とした。培養検査結果は陰性で菌種の特定はできなかったが,糸状菌が検出されなくなるまで角膜擦過を継続,2か月後には角膜混濁を残すものの角膜上皮欠損が消退し退院となった。その後,非ステロイド系抗炎症薬の点眼を追加し,右眼矯正視力は加療開始5か月後に0.7,1年半後には0.8まで改善した。
結論:角膜潰瘍例の角膜擦過物の培養結果が陰性であっても,塗抹検鏡による病原体検出は治療薬の選択のみならず効果判定にも有用であった。また,コンタクトレンズの種類の安易な変更や,ケア方法の未習得は避けるべきである。
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