icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科75巻8号

2021年08月発行

文献概要

特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

角膜擦過物の検鏡が治療効果判定に役立った真菌性角膜潰瘍の1例

著者: 杉田丈夫1 土至田宏1 朝岡聖子1 市川浩平1 林雄介1 松崎有修1 平井麻紀1 太田俊彦1

所属機関: 1順天堂大学医学部附属静岡病院眼科

ページ範囲:P.1111 - P.1116

文献購入ページに移動
要約 目的:感染性角膜潰瘍における培養検査結果が陰性であったが,塗抹検鏡による真菌の検出が治療効果判定に役立った1例を報告する。

症例:15歳,女性。毎日交換型ソフトコンタクトレンズ(SCL)の装用を開始も,翌月には頻回交換型SCLに処方変更となった。その際にレンズケア方法の説明はされなかった。同月中に右眼の視力低下,充血,眼痛,流涙,羞明が出現したため近医を受診し,アカントアメーバ角膜炎が疑われ順天堂大学医学部附属静岡病院に紹介され初診となった。右眼の初診時矯正視力は0.02,右眼の角膜中央部に混濁と浸潤を伴う角膜潰瘍を認め,角膜擦過物の培養検査と塗抹検鏡を行った。当科における検鏡で糸状菌を確認,入院のうえ抗真菌薬の点眼と点滴中心の治療内容とした。培養検査結果は陰性で菌種の特定はできなかったが,糸状菌が検出されなくなるまで角膜擦過を継続,2か月後には角膜混濁を残すものの角膜上皮欠損が消退し退院となった。その後,非ステロイド系抗炎症薬の点眼を追加し,右眼矯正視力は加療開始5か月後に0.7,1年半後には0.8まで改善した。

結論:角膜潰瘍例の角膜擦過物の培養結果が陰性であっても,塗抹検鏡による病原体検出は治療薬の選択のみならず効果判定にも有用であった。また,コンタクトレンズの種類の安易な変更や,ケア方法の未習得は避けるべきである。

参考文献

1)井上禎子・靳 雷・塩田 洋:角膜真菌症.あたらしい眼科19:999-1003,2002
2)稲田紀子:角膜真菌症.臨眼57(増刊):170-175,2003
3)山田直之:酵母菌感染症.眼科58:1047-1054,2016
4)宇野敏彦:真菌性角膜炎.臨眼70(増刊):199-203,2016
5)阿部美知子・久米 光:真菌症の微生物学的検査—直接鏡検と分離培養.Medical Mycology Journal 54:19-25,2013
二重染色の有用性.日眼会誌117:351-356,2013
7)感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版 第2章 感染性角膜炎の病態・病型.日眼会誌117:484-490,2013
8)井上幸次・大橋裕一・鈴木 崇・他:真菌性角膜炎に関する他施設共同前向き観察研究—患者背景・臨床所見・治療・予後の現況.日眼会誌120:5-16,2016
点滴静注用50mgインタビューフォーム.大日本住友製薬株式会社,2010年8月
10)中蔵伊知郎・木原理絵・阿部正樹・他:腎機能別に観察したリポソーマルアムホテリシンBによる低カリウム血症.日腎薬誌2:11-16,2013
11)渡辺英臣・柏井真理子・大薮由布子・他:平成30年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査.日本の眼科90:1194-1216,2019
12)宇津見義一:改正薬事法とコンタクトレンズ販売.IOL & RS 19:93-95,2005
13)土至田宏:コンタクトレンズの法律上の分類.日コレ誌60:48-49,2018
14)土至田宏・松崎有修・東 千晶・他:過去3年間に入院を要した角膜潰瘍例の検討.臨眼74:887-891,2020
15)土至田宏:コンタクトレンズ眼障害例における視力予後について.日コレ誌60:156-157,2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?