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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
ぶどう膜・視神経・強膜に炎症を生じた神経梅毒の1例
著者: 野間沙樹1 郷渡有子1 尾花明12 本田茂2
所属機関: 1聖隷浜松病院眼科 2大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学
ページ範囲:P.1178 - P.1183
文献購入ページに移動症例:74歳,男性。2年前に左眼うっ血乳頭を指摘され,他院脳神経外科で異常なしと診断された。1年前に左眼充血を主訴に近医眼科を受診し,抗菌薬とステロイド点眼で改善がないまま経過観察された。1か月前に左視力低下をきたし当科に紹介された。
所見:視力は右(1.2),左(0.4)。左眼の球結膜充血があり,乳頭は境界不鮮明で,軽度の硝子体混濁と光干渉断層撮影で黄斑浮腫,網膜下液を認めた。限界フリッカ値は右43Hz,左25Hz。フルオレセイン蛍光眼底造影の後期相に左眼のleakageによる過蛍光斑が眼底全体に広がり,特に乳頭周囲に密集していた。インドシアニングリーン蛍光眼底造影では,左眼に限局性の低蛍光斑が複数箇所にみられた。血液および髄液の梅毒血清反応,梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収検査がともに高値で神経梅毒と診断した。ベンジルペニシリン全身投与後も黄斑浮腫が軽減しないため,初診1か月および6か月後にトリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射を施行した。充血と黄斑浮腫は軽快し,左視力は(0.8)に改善した。
結論:本例はぶどう膜,視神経炎,強膜炎を合併した神経梅毒である。駆梅治療のみでは眼所見は完全には改善せず,ステロイドテノン囊下投与が奏効した。
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