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特集 第74回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
網膜細動脈瘤破裂を起点に網膜動脈分枝閉塞症を合併した1例
著者: 杉江正崇1 迫野卓士1 大場すみれ1 中西瑠美子1 佐藤美紗子1
所属機関: 1横浜労災病院眼科
ページ範囲:P.1241 - P.1245
文献購入ページに移動症例:71歳,男性。2019年9月上旬ごろからの左眼鼻側の見えにくさを主訴に,2019年10月中旬に前医を受診し,左眼の網膜細動脈瘤破裂を指摘された。2019年10月下旬,精査加療目的に当院を紹介され受診した。既往歴は胃潰瘍のみで,家族歴と全身所見に特記すべきことはなかった。
所見:初診時視力は右(1.2),左(0.9),左眼眼底の上耳側網膜動脈第2分枝に網膜出血,輪状硬性白斑を伴う黄白色の瘤状病変を認めた。また,瘤状病変より末梢の動脈灌流領域に一致して,網膜浮腫および網膜の白濁を認めた。これらの所見より,網膜細動脈瘤破裂およびBRAOを疑った。フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,細動脈瘤より末梢での灌流途絶を認め,BRAOの合併と診断した。
結論:網膜細動脈瘤にBRAOを合併する原因として,細動脈瘤の血管壁の破綻により,血栓形成が促されることが考えられる。網膜細動脈瘤は経過観察することが多いが,瘤の破裂により出血や滲出性変化を伴うものには網膜光凝固術や硝子体手術が試みられている。本症例のように網膜細動脈瘤に出血を伴う場合,BRAOを合併する可能性もあり,入念な経過観察が必要である。こうした症例に対し網膜光凝固術が有用な可能性はあるが,その施行は慎重に判断されるべきである。
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