特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[8]
原著
白内障手術併用眼内ドレーン挿入術(iStent inject W)とMicrohook線維柱帯切開術の術後短期成績
著者:
武川修治
,
北原潤也
,
知久喜明
,
柿原伸次
,
榑沼大平
,
若林真澄
,
朱さゆり
,
今井章
,
平野隆雄
,
村田敏規
ページ範囲:P.1387 - P.1392
要約 目的:白内障手術併用眼内ドレーン挿入術(iStent inject W)と,白内障手術にMicrohookを用いた線維柱帯切開術(μLOT)を併施した緑内障症例の短期術後成績と術後合併症について検討する。
対象と方法:2019年1月〜2021年6月の間に初回の緑内障手術として白内障手術を併用したiStent inject WあるいはμLOTを行い,6か月以上の経過観察ができた患者59例70眼(iStent inject W群27例34眼,μLOT群32例36眼)を後ろ向きに調査した。評価項目として術前後の眼圧と点眼スコアの変化,術後合併症などを検討した。
結果:患者の平均年齢はiStent inject W群で76.3±7.0歳であり,μLOT群で68.3±12.0歳であった。術前,術後1か月,3か月,6か月の眼圧は,iStent inject W群で14.6±3.6mmHg,11.2±2.6mmHg,10.6±3.3mmHg,10.9±3.0mmHg(術後1,3,6か月vs術前,p<0.001,ダネットの多重比較検定)であり,μLOT群で15.6±4.5mmHg,10.7±3.2mmHg,10.1±2.7mmHg,10.0±2.6mmHg(術後1,3,6か月vs術前,p<0.001,ダネットの多重比較検定)であり,両術式とも術後のいずれの時点においても術前と比較して有意に眼圧は下降した。術後合併症の比較では,ニボーを形成する前房出血を呈したのはiStent inject W群では1眼(3%),μLOT群では9眼(25%)であり,iStent inject W群で有意に頻度が低かった(p<0.05,χ2検定)。
結論:iStent inject WとμLOTはともに,術前と比較して有意に眼圧を下降させた。術後の前房出血の頻度はiStent inject Wのほうが有意に低かった。