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臨床報告
15年間引きこもり後に見つかった増殖糖尿病網膜症の1例
著者: 武藤哲也12 町田繁樹1 今泉信一郎2
所属機関: 1獨協医科大学埼玉医療センター眼科 2今泉眼科病院
ページ範囲:P.1725 - P.1729
文献購入ページに移動症例:35歳,男性。引きこもり中に右下腿蜂窩織炎を生じ,近医内科を初診した。未治療糖尿病と右下腿蜂窩織炎の診断を受け,獨協医科大学埼玉医療センター糖尿病内科を初診した。糖尿病網膜症精査のため,眼科に紹介となった。視力は両眼とも(0.6)と若干低下していた。前眼部および中間透光体に異常はなかったが,両眼底に軟性白斑としみ状出血が散在していた。黄斑浮腫はわずかであった。蛍光眼底造影を行い,両眼ともに視神経乳頭外の新生血管が確認できたので汎網膜光凝固を行った。光凝固後,黄斑浮腫が悪化したので両眼にアフリベルセプト硝子体内注射を3回行い,経過観察中である。左眼に硝子体出血も生じたが,汎網膜光凝固が行われていたのでほどなくして吸収された。初診から14か月後の視力は両眼とも(0.4)である。引きこもりの理由については不明のままである。
結論:15年間の引きこもり中,医療機関を受診しておらず,重症化して初めて診断され治療を開始できた。眼科受診をきっかけとして社会との継続的な接点ができ,通院が引きこもり自体の治療になっていると考えられた。
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