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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻13号

2022年12月発行

文献概要

臨床報告

15年間引きこもり後に見つかった増殖糖尿病網膜症の1例

著者: 武藤哲也12 町田繁樹1 今泉信一郎2

所属機関: 1獨協医科大学埼玉医療センター眼科 2今泉眼科病院

ページ範囲:P.1725 - P.1729

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要約 目的:15年間の引きこもり後,発見された増殖糖尿病網膜症の1例を経験したので報告する。

症例:35歳,男性。引きこもり中に右下腿蜂窩織炎を生じ,近医内科を初診した。未治療糖尿病と右下腿蜂窩織炎の診断を受け,獨協医科大学埼玉医療センター糖尿病内科を初診した。糖尿病網膜症精査のため,眼科に紹介となった。視力は両眼とも(0.6)と若干低下していた。前眼部および中間透光体に異常はなかったが,両眼底に軟性白斑としみ状出血が散在していた。黄斑浮腫はわずかであった。蛍光眼底造影を行い,両眼ともに視神経乳頭外の新生血管が確認できたので汎網膜光凝固を行った。光凝固後,黄斑浮腫が悪化したので両眼にアフリベルセプト硝子体内注射を3回行い,経過観察中である。左眼に硝子体出血も生じたが,汎網膜光凝固が行われていたのでほどなくして吸収された。初診から14か月後の視力は両眼とも(0.4)である。引きこもりの理由については不明のままである。

結論:15年間の引きこもり中,医療機関を受診しておらず,重症化して初めて診断され治療を開始できた。眼科受診をきっかけとして社会との継続的な接点ができ,通院が引きこもり自体の治療になっていると考えられた。

参考文献

1)濱崎由紀子・ニコラ・タジャン:ひきこもり研究から見える現代日本社会の病理.現代社会研究20:37-49,2018
2)International Diabetes Federation:IDF Diabetes Atlas, 9th edition 2019(https://www.diabetesatlas.org/atlas/ninth-edition)
3)山下 勝・山内豊明:引きこもりの未治療糖尿病に合併した非Clostridiumガス壊疽の1例.整形外科と災害外科70:500-502,2021
4)足立 準・毛利有希・庄田裕紀子・他:感染性心内膜炎を併発し死亡したアトピー性皮膚炎の1例.皮膚42:148-152,2000
5)豊永雅恵・佐藤雄一・布井清秀・他:高浸透圧性非ケトン性昏睡を発症したひきこもり者の2型糖尿病の1剖検例.糖尿病49:737-742,2006
6)遠谷寛人・二瓶亜樹・森 秀夫:長期ひきこもり者の重症増殖糖尿病網膜症.臨眼75:827-831,2021
7)野村 収・澁谷智義・長田太郎・他:消化器症状の出現によりひきこもりになり,確定診断と治療によってひきこもりが改善したクローン病の1例.消化器心身医学21:23-25,2014
8)梅本尚可・飯田絵里・塚原理恵子・他:ひきこもりだったアトピー性皮膚炎—心身医学的アプローチにより治療効果が上昇した1例.皮膚の科学11:53-56,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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