文献詳細
文献概要
特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著
免疫抑制剤導入後にEBV関連のぶどう膜炎,リンパ増殖性疾患が疑われた強膜炎の1例
著者: 中江泰之1 松木考顕1 渡辺健1 秋山邦彦1 野田徹1
所属機関: 1独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター眼科
ページ範囲:P.326 - P.332
文献購入ページに移動症例:69歳,女性。
所見と経過:RAを契機に発症した左強膜炎に対しステロイド内服・局所注射で症状の再燃と眼圧上昇を繰り返し,強膜菲薄化が進行したためアダリムマブ(ADA)を導入したところ,左強膜炎は軽快したが虹彩炎を発症した。前房水からCMV-DNAが検出され,CMV虹彩炎と診断し,バルガンシクロビル内服とガンシクロビル点眼により消炎を得た。半年後に左虹彩炎が再発,前房蓄膿とびまん性硝子体混濁を伴い,前房水からEBV-DNAが検出された(8.36×105copies/ml)。EBV関連ぶどう膜炎と診断して抗ウイルス薬を再開したが,眼内炎症はいったん軽快した後に再燃し硝子体混濁が悪化した。診断治療目的に硝子体手術を行ったところ,硝子体液からもEBV-DNAが検出され(4.00×105copies/ml),細胞診では少数の異型リンパ球がみられた。EBV関連のリンパ増殖性疾患/リンパ腫が疑われADAの中止を検討したが,眼内炎症を制御できないまま全身の日和見感染を生じ敗血性ショックで死亡した。
結論:TNFα阻害薬導入の際には,全身だけでなく眼局所においても日和見感染症やリンパ増殖性疾患の可能性を念頭に置かなければならない。
参考文献
掲載誌情報