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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻3号

2022年03月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

ステロイド局所投与によって軽快した樹氷状血管炎の1例

著者: 中井美穂1 盛秀嗣1 山田晴彦1 藤原亮1 髙橋寛二1

所属機関: 1関西医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.348 - P.353

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要約 目的:樹氷状血管炎は何らかの感染症に伴うアレルギー性の炎症反応による網膜血管炎であると考えられ,通常ステロイド薬の全身投与が著効する。今回,若年女性のウイルス感染症を契機に発症した樹氷状血管炎に対してステロイド薬(メチルプレドニゾロン酢酸エステル懸濁注射液)のテノン囊下注射とベタメタゾンリン酸エステルの点眼治療により改善に至った1例を経験したので報告する。

症例:19歳,女性。高熱,頭痛,眩暈,嘔気を認め,他病院でウイルス感染症と診断され入院加療中であった。抗菌薬および抗ウイルス薬の投与開始後に両眼の視力低下を自覚し,関西医科大学附属病院を紹介され受診となった。矯正視力は右0.01,左0.02であった。両眼とも広範囲に網膜静脈の白鞘化を,また黄斑部に浮腫と漿液性網膜剝離を認めた。フルオレセイン蛍光造影眼底検査では,樹氷状血管炎に特徴的な網膜静脈からの蛍光漏出を認めた。血液検査を含む全身検査では有意な所見はなく,前房水PCRでヘルペスウイルス属は検出されなかった。以上の所見から,樹氷状血管炎と確定診断した。両眼に前述のステロイド薬のテノン囊下注射と点眼治療を行い,治療後3か月時点で両眼ともに網膜静脈の白鞘化の色調ならびに黄斑部の異常所見は消失した。治療数か月後に矯正視力は両眼とも1.0に改善した。

結論:樹氷状血管炎にはステロイド薬の全身投与が著効するが,局所投与であっても治療効果が良好な症例がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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