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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻5号

2022年05月発行

文献概要

臨床報告

直接作用型抗凝固薬継続下での白内障術後に創部出血が遷延した1例

著者: 上田祥太郎1 小島祥2 井上俊洋2

所属機関: 1国保水俣市立総合医療センター眼科 2熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座

ページ範囲:P.603 - P.606

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要約 目的:高齢者はさまざまな全身疾患を有し,抗凝固薬や抗血小板薬内服による抗血栓療法を受けていることも少なくない。アピキサバンは抗凝固薬のうち,直接作用型抗凝固薬(DOAC)に分類されるものである。DOACには凝固能についてのモニタリング指標が存在しない。今回,アピキサバン内服継続下での白内障手術後に,術創からの出血が遷延した症例を経験したので報告する。

症例:82歳,女性。心房細動のためアピキサバン2.5mg/日を内服中であった。術前検査では凝固能はプロトロンビン時間でわずかな延長があったが,その他の指標はすべて基準値内であった。左眼白内障に対し,超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した。切開創は強角膜3面切開で作成した。術後約2時間の時点で術創からの出血を確認しタンポンガーゼで経過をみたが,術翌日も出血が遷延していた。アピキサバン内服を中止した後,止血を確認した。

結論:白内障手術時に抗血栓療法を継続することは望ましいとする報告は多いが,抗血栓療法継続下での眼科手術時の出血性合併症の報告も複数ある。術後の創部出血の遷延は視機能には影響しないが,患者などの不安を煽る可能性もあり,周術期における出血リスクには十分留意する必要があると考えられる。

参考文献

1)中川 卓・村田博史・沼賀二郎・他:白内障術後に結膜創から再出血した抗凝固療法中の1症例.眼科52:83-87,2010
2)山崎有加里・南部裕之・髙橋寛二・他:臨床報告 眼科診療における抗血小板薬全身投与の問題点.臨眼56:141-146,2002
3)2008年度合同研究班報告:循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).55-56,2009
4)永岡 了・小林かおり・井原力哉・他:抗血栓薬継続下で施行した白内障手術の出血性合併症.倉敷中央病院年報81:13-16,2019
5)高橋利英・正木究岳・杉本琢二・他:白内障手術において抗凝固薬・抗血小板薬の中止は必要か.眼臨紀:216-218,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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