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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻5号

2022年05月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[3]

単焦点および多焦点眼内レンズにおける距離別コントラスト感度の検討

著者: 甘利裕明1 鈴木恵奈1 平田憲史1 渡邊智人1 中塚秀司1 伊藤博隆1 杢野久美子1

所属機関: 1医療法人豊田会刈谷豊田総合病院眼科

ページ範囲:P.684 - P.688

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要約 目的:多焦点眼内レンズ(IOL)の明視域評価として,主に全距離視力検査が用いられているが,視力検査だけでは評価困難な患者満足度に関連する視覚の質の評価方法としてコントラスト感度検査がある。従来,コントラスト感度検査の検査距離は一定であり,複数の距離における感度測定が困難であった。今回筆者らは,複数距離でコントラスト感度測定が可能なaccu-pad®(ジャパンフォーカス社)を用いて,単焦点IOL挿入眼と多焦点IOL挿入眼における距離別のコントラスト感度を比較検討した。

対象と方法:対象は,多焦点IOL(LENTIS® Comfort)を両眼に挿入した15例(男性7例,女性8例,平均年齢73.3±3.8歳)と単焦点IOL(VivinexTM iSert® 11例,AvanseeTM Preset 3例,AcrySof® IQ 1例)を両眼に挿入した15例(男性9例,女性6例,平均年齢77.0±4.9歳)である。accu-pad®を用いて,検査距離5mと1mにおける5つの空間周波数〔1.5cycles/degree(cpd),3cpd,6cpd,12cpd,18cpd〕について,コントラスト感度を測定した。

結果:検査距離5mのコントラスト感度は,多焦点IOLと単焦点IOLの両群間においてすべての空間周波数で有意差は認められなかった。検査距離1mのコントラスト感度は,中〜高空間周波数領域(12cpd,18cpd)において多焦点IOL群が有意に高値を示した(p<0.01)。

結論:多焦点IOLの視機能評価として,複数の距離におけるコントラスト感度検査の有用性が示唆された。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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