icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻6号

2022年06月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[4] 原著

0.05%オキシブプロカイン塩酸塩点眼の有効性が示唆された三叉神経障害性疼痛の1例

著者: 植谷忠通1 鈴木崇弘1 佐藤由紀2 鈴木康之1

所属機関: 1東海大学医学部付属病院眼科 2かやま駅前眼科

ページ範囲:P.759 - P.764

文献購入ページに移動
要約 目的:頭蓋内の腫瘍や血管による三叉神経の圧迫により三叉神経神経障害性疼痛(TNP)を生じることはよく知られている。今回筆者らは,三叉神経近傍の脳腫瘍摘出術後に,残存した腫瘍に伴うTNPに関連した眼症状が疑われた症例に対し,0.05%オキシブプロカイン塩酸塩点眼の有効性が示唆された1例を経験したので報告する。

症例:患者は38歳,女性。頭重感を主訴に近医脳神経外科を受診し,脳腫瘍と診断された。その後東海大学医学部付属病院(以下,当院)脳神経外科へ紹介され,右視神経近傍の脳腫瘍に対して摘出術を試みるも全摘出はできず,一部の腫瘍は残存した状態で手術終了となった。術後5日目より右眼に眼痛および羞明が出現したため,残存した腫瘍に伴うTNPとの関連を疑い,脳神経外科にてプレガバリンとカルバマゼピンが処方されたが効果はなかった。当院眼科での診察においても眼科的異常所見を認めず,内服薬の継続,鎮痛薬の頓用などによる対症療法のみで退院となった。その後も改善なく眼痛・羞明の増悪,就業不可などの日常生活の制限も認めたため近医眼科を受診となった。TNPに伴う角膜知覚異常の可能性に加え流涙も認めていたため,0.05%オキシブプロカイン塩酸塩点眼を処方したところ,症状は著明に改善し,就業も可能となった。

結論:術後の残存腫瘍に伴うTNPに関連した眼症状が疑われる症例において,0.05%オキシブプロカイン塩酸塩点眼が有効な可能性が示唆された。

参考文献

1)Burchiel KJ:Trigeminal neuropathic pain. Acta Neurochir Suppl(Wien) 58:145-149, 1993
2)石井智子・井関雅子:神経障害性疼痛・三叉神経痛治療薬.medicina 55:383-386,2018
3)今村佳樹・岡田明子・野間 昇:神経障害性疼痛の診断.日本口腔顔面痛学会雑誌4:3-11,2011
4)Baron R, Binder A, Wasner G:Neuropathic pain:diagnosis, pathophysiological mechanisms, and treatment. Lancet Neurol 9:807-819, 2010
5)山西竜太郎・内野美樹・川島素子:アイペインとドライアイ.臨眼74:1360-1365,2020
6)蒲生真里・原 直人・君島真純・他:羞明と眼周囲不快感を訴える視機能性障害患者の臨床的特徴と眼・自律神経所見.自律神経57:225-230,2020
7)Albilali A, Dilli E:Photophobia:when light hurts, a review. Curr Neurol Neurosci Rep 18:62, 2018
8)Kuroiwa Y:Circumventricular organs dysregulation syndrome(CODS). The Autonomic Nervous System 56:1-5, 2019
9)五島久陽・鈴木倫保:三叉神経痛のレシピ.臨牀と研究97:161-166,2020
10)長沼芳和:三叉神経痛におけるカルバマゼピン療法の現状.日本ペインクリニック学会誌26:67-69,2019
11)更科紗和子・松崎 孝・小野大輔・他:神経障害性痛類似の眼痛を呈した3症例.日本ペインクリニック学会誌28:1-4,2021
12)鰐渕昌彦:頭蓋底髄膜腫に対する集学的治療と今後の可能性.脳神経外科ジャーナル29:553-559,2020
13)池田 潤:脳腫瘍 脳腫瘍治療における高精度放射線治療の役割.脳神経外科速報19:52-59,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?