文献詳細
特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[4]
原著
眼球陥凹をきたした乳癌眼窩転移の1例
著者: 寺田佳子1 吉鷹真理子1 奥田聖瞳1 梶原友紀子2 谷口恒平3 原和之1
所属機関: 1地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立広島市民病院眼科 2地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立広島市民病院乳腺外科 3地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立広島市民病院病理診断科
ページ範囲:P.807 - P.813
文献概要
症例:患者は53歳,女性。2015年頃から右眼の開きづらさを自覚した。初診時の矯正視力は左右ともに1.0,眼圧は右16mmHg,左13mmHgであった。複視の自覚はなかったが,右眼は全方向に運動が制限されており,左上斜視を認めた。右眼球陥凹を認め,眼窩開口部から頰骨前面の皮下にかけて圧痛のない弾性硬のびまん性構造物を触れた。眼窩CTでは,右頰骨前皮下から眼球周囲にかけて外眼筋とほぼ同等の放射線吸収を示す境界不鮮明な構造物を認めた。2010年に左乳癌(ステージⅢC)に対する乳房全摘および化学療法,放射線照射の既往があったが,その他の転移所見はなかった。しかし,右眼窩病変の生検で乳癌眼窩転移と診断した。局所への放射線照射,アロマターゼ阻害薬の内服を施行したところ増悪なく経過した。2020年,右視力低下をきたし,右視神経乳頭腫脹を認めた。眼窩病変の増大による圧迫と診断し,化学療法を強化したところ,右視神経乳頭腫脹は改善した。
結論:一般に眼窩腫瘍では眼球突出をきたすことが多いが,乳癌の一部では眼球陥凹となるため注意が必要である。完治は困難であるが,加療により視機能の維持を図ることができる。
参考文献
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