文献詳細
特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[4]
原著
視神経脊髄炎スペクトラム障害加療中にCOVID-19を発症した1例
著者: 岡あゆみ1 永吉美月1 髙木宣典1 鈴木脩司1 海津嘉弘1 津川潤2 衛藤聡3 池田貴登4 石井寛4 久冨智朗1
所属機関: 1福岡大学筑紫病院眼科 2福岡大学筑紫病院脳神経外科 3福岡大学筑紫病院腎臓内科 4福岡大学筑紫病院呼吸器内科
ページ範囲:P.845 - P.850
文献概要
症例:患者は65歳,女性。8年前より抗AQP4抗体陽性の左眼発症のNMOSDと診断され,過去に3度のステロイドパルス療法を施行されていた。今回,右視力低下を自覚し,福岡大学筑紫病院眼科を再診した。著明な右視力低下(光覚なし)と抗AQP4抗体価40U/ml以上の上昇を認め,集学的な治療が必要と判断し,ステロイドパルス療法および血漿交換療法を開始した。ステロイドパルス療法2コース,血漿交換療法5コースを施行した時点で,スクリーニング目的のPCR検査にてCOVID-19陽性が判明した。
経過:同日より個室への隔離を開始し,血漿交換療法を終了し,ステロイドパルス療法はプレドニゾロン内服漸減療法へ移行した。COVID-19陽性判明時は無症状であったが,陽性判明から4日後より発熱・咳嗽の症状が出現し,7日後から胸部単純X線写真で右肺上下葉の陰影が出現し血中酸素濃度の低下を認めたため,同日より酸素・ファビピラビルの投与を開始した。治療開始後13日で両肺野の陰影は改善し,14日間でファビピラビル投与を終了し,その後肺炎の再燃はなかった。抗AQP4抗体価は減少し,第76病日には矯正視力は右1.2,左0.2と改善した。プレドニゾロン10mg/日維持療法を行い,以降現在まで再発はない。
結論:NMOSDおよびCOVID-19に対し早期より集学的治療を行い,良好な経過を得た。今後も感染症を併発する症例の発生が予測され,早期発見・治療が重要と考えた。
参考文献
掲載誌情報