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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻7号

2022年07月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

ブリモニジンによる角膜混濁が疑われた1例

著者: 宮久保朋子1 戸所大輔1 秋山英雄1

所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科眼科学教室

ページ範囲:P.921 - P.925

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要約 目的:ブリモニジン酒石酸塩点眼液の副作用として点状表層角膜炎,眼瞼炎,濾胞性結膜炎が知られているが,近年ブリモニジン点眼中に角膜混濁をきたした症例が複数報告されている。今回筆者らは,ブリモニジンを含む緑内障点眼多剤併用中に角膜混濁をきたした症例を経験したので報告する。

症例:73歳,女性。2016年12月に両眼の開放隅角緑内障と診断され,近医でタフルプロスト,ブリモニジン,ヒアルロン酸ナトリウム点眼を処方されていた。2020年10月に右角膜混濁に気づき,当院を紹介され受診した。初診時,両眼の結膜充血と結膜濾胞を認めた。また,右角膜周辺部に血管侵入を伴う扇形の角膜実質混濁を認めた。血液検査で結核および梅毒の感染はいずれも否定され,前房水の網羅的PCR検査では単純ヘルペスウイルス,水痘帯状疱疹ウイルスを含む全項目が陰性であった。ブリモニジンによる角膜混濁の既報と所見が類似していたことからブリモニジンによる角膜混濁を疑って点眼を中止し,ベタメタゾン点眼を開始した。ブリモニジン中止後,両眼の結膜充血と結膜濾胞は改善したが,角膜実質混濁は残存した。

結論:緑内障点眼多剤併用中に角膜周辺部の実質混濁をきたした症例を経験した。ブリモニジンによる角膜混濁の既報と所見が類似していること,結膜充血と結膜濾胞がみられたことから,ブリモニジンによる慢性の結膜充血から角膜新生血管を生じ,角膜実質内に脂質沈着をきたしたものと思われた。

参考文献

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2)永沢 倫・菅野 彰・山下英俊:多剤併用治療中の緑内障患者に対する0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液への切り替え効果.臨眼68:499-501,2014
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点眼液0.1%)の薬理学的特性および臨床効果.日本薬理学会雑誌140:177-182,2012
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7)依藤彰記・細谷友雅・岡本真奈・他:ブリモニジン点眼液使用経過中に発症した角膜実質炎の3例.眼科61:1527-1533,2019
8)Manabe Y, Sawada A, Mochizuki K:Corneal sterile infiltration induced by topical use of ocular hypotensive agent. Eur J Ophthalmol 30:NP23-NP25, 2020
9)Kasuya Y, Sano I, Makino S et al:Corneal opacity induced by antiglaucoma agents other than brimonidine tartrate. Case Rep Ophthalmol Med. doi:10.1155/2020/4803651, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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