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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻7号

2022年07月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

裂孔原性網膜剝離に対する強膜バックリング術後に特異な炎症反応を生じたアトピー性皮膚炎の2例

著者: 野中椋太1 馬詰和比古1 曽根久美子1 朝蔭正樹1 馬詰朗比古1 山本香織1 後藤浩1

所属機関: 1東京医科大学臨床医学系眼科学分野

ページ範囲:P.1003 - P.1008

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要約 緒言:アトピー性皮膚炎(AD)では,2.3〜8%に裂孔原性網膜剝離(RRD)が合併するとされる。重度ADに伴うRRDに対して強膜バックリング(SB)術を施行後,特異な炎症反応を呈した2例を経験したので報告する。

症例:症例1は28歳,女性。アトピー白内障術後の経過観察中に左眼下方のRRDを生じた。シリコーンタイヤを用いたSB術を施行したところ,術翌日から眼痛と結膜充血を認めた。ステロイド薬の内服で一時的に結膜充血は改善したが徐々に結膜が融解し,局所感染も合併し,シリコーンタイヤが露出した。抗菌薬治療および結膜縫合を試みたが再度離開したため,シリコーンタイヤを部分的に切除した。民間療法施設での精査によってシリコーンタイヤに対する過敏反応を指摘されたため,最終的にすべてのシリコーンタイヤを摘出したところ,炎症所見は消退した。

 症例2は47歳,男性。左眼の網膜萎縮円孔を原因とする下方のRRDに対してSB術を施行した。術後の経過は良好であったが,5日目に突然,左眼視力が手動弁まで低下し,高度な結膜浮腫と前房蓄膿,硝子体混濁が観察された。術後感染性眼内炎の治療プロトコールに沿って薬物療法を施行したが,反応は限定的であった。治療開始3日目からステロイドの点滴静注を施行したところ,速やかに結膜充血は改善し,前房蓄膿も消失し,眼底も透見可能となった。

結論:SB術後に特異な局所炎症反応を生じた2症例を経験した。原因は不明であるが,いずれも重度のADが背景にあり,その関与が推定された。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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