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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻8号

2022年08月発行

文献概要

臨床報告

ブリモニジン酒石酸塩点眼液使用中に角膜実質混濁が急速に進行した1例

著者: 小島創太1 岩瀬剛1

所属機関: 1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座

ページ範囲:P.1049 - P.1053

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要約 目的:緑内障治療でブリモニジン酒石酸塩点眼液を使用中に角膜実質混濁が生じ急速に進行し,投与の中止およびステロイド点眼により症状の改善がみられた症例を経験したので報告する。

症例:78歳,女性

所見と経過:2014年に両眼の原発開放隅角緑内障と診断され,タフルプロスト・チモロールマレイン酸塩液を点眼し加療していた。視野障害が進行したため,2019年2月からブリモニジン酒石酸塩点眼液を開始した。2020年11月受診時,右眼では耳側角膜周辺部に新生血管を伴わないわずかな混濁がみられた。その後1か月で角膜混濁は急速に進行し角膜中央部まで達し,新生血管を伴った混濁となった。その1か月後に混濁はさらに拡大し,右矯正視力は0.3まで低下した。前眼部光干渉断層計では,混濁と一致した部位に角膜実質に限局する高反射所見を認めた。ブリモニジン酒石酸塩点眼液による角膜混濁の可能性が高いと考え,2021年1月からブリモニジン酒石酸塩点眼液の使用を中止し,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液を開始した。その後2週間の経過で角膜混濁範囲は変わらなかったが,混濁の程度は軽減し,右矯正視力は0.5に改善した。その後も混濁程度は徐々に改善し,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液の開始から2か月後には右矯正視力は0.6となった。

結論:ブリモニジン酒石酸塩点眼液を使用中の患者で角膜混濁が生じた場合には,速やかに他の原因を鑑別し,ブリモニジン酒石酸塩点眼液の使用を中止すること,およびステロイド点眼を開始することを考慮する必要がある。

参考文献

点眼液0.1%)の薬理学的特性および臨床効果.日本薬理学雑誌140:177-182,2012
2)Maruyama Y, Ikeda Y, Yokoi N et al:Severe corneal disorders developed after brimonidine tartrate ophthalmic solution use. Cornea 36:1567-1569, 2017
3)Tsujikawa A, Takai Y, Inoue Y et al:A case of bilateral deep stromal corneal opacity and vascularization after use of multiple antiglaucoma medications including brimonidine tartrate ophthalmic solution. Acta Ophthalmol 97:e948-e949, 2019
4)Shin HY, Lee HS, Lee YC et al:Effect of brimonidine on B cells, T cells, and cytokines of the ocular surface and aqueous humor in rat eyes. J Ocul Pharmacol Ther 31:623-626, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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