文献詳細
特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[6]
原著
左右注視眼振,顔面神経麻痺および聴覚障害を合併したWallenberg症候群の1例
著者: 松浦一貴1 寺坂祐樹1 今岡慎弥1
所属機関: 1野島病院眼科
ページ範囲:P.1115 - P.1120
文献概要
症例:患者は76歳,男性。左片側の顔面痙攣に対する頭蓋内微小血管減圧術後に,めまい,左顔面神経麻痺,嚥下障害,複視,構音障害,右上下肢の感覚障害を発症した。MRIで脳幹梗塞(左延髄〜橋下部)が確認され,Wallenberg症候群と診断された。経過中に側方に急速相をもつ左右側方注視眼振と病側の難聴を認めた。構音障害,嚥下障害,上下肢の感覚障害,めまいはWallenberg症候群の典型的な症状である。片側顔面痙攣に対する頭蓋内微小血管減圧術は,前下小脳動脈(AICA)または後下小脳動脈(PICA)血管の圧迫による神経症状を取り除く術式である。解剖学的にAICA,PICAと顔面神経および聴神経は隣接しているため術中に神経を直接損傷した可能性もあるが,血管が傷害され虚血を生じたことから顔面神経麻痺,難聴および両側への注視眼振をきたしたと考えられた。
結論:筆者らは,非典型的症状である病側の側方注視眼振,顔面神経麻痺および聴覚障害を呈したWallenberg症候群の1症例を経験した。本症例ではAICAまたはPICAの先天欠損や慢性虚血がAICAとPICAの吻合によって栄養されていたと想定される。脳外科手術によってAICAまたはPICAが傷害されたため,AICA梗塞とPICA梗塞の両方の症状を伴うWallenberg症候群が発症したと考えられた。
参考文献
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