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特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
眼打撲直後に発症した急性帯状潜在性網膜外層症様の網膜障害の1例
著者: 藤森琢磨1 木崎順一郎1 恩田秀寿1
所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座
ページ範囲:P.1142 - P.1150
文献購入ページに移動症例:患者は23歳,女性。もともとの矯正視力は両眼とも1.2であったが,過去に右眼打撲後の両眼の視野欠損を指摘されたことがある。水球の試合中に相手の指で右眼を打撲し,受傷直後より右眼の視力障害を自覚した。近医で精査したが,原因となりうる異常はなかった。改善がみられず,受傷後13日目に精査加療目的で昭和大学病院附属東病院眼科を紹介され受診した。
所見:矯正視力は右0.07,左1.2であった。ゴールドマン視野計(GP)で右眼視野は耳側が広範囲に欠損していた。眼底検査,光干渉断層計,蛍光眼底造影検査および頭部画像検査などで明らかな異常はなかったが,多局所網膜電図で右眼の電位は広範囲で低下していた。視機能障害を説明しうる異常所見はなく,視神経障害も否定的であったため,AZOORに類似した網脈絡膜障害と判断した。AZOORの重症例に準じ,ステロイドパルス療法を3日×2回施行した後,副腎皮質ステロイド内服を漸減した。右眼の矯正視力は徐々に改善し,最終的に1.2まで回復した。GPでの視野も6か月後には正常まで改善した。
結論:眼打撲を契機にAZOOR様の網膜障害を発症した症例を経験した。初診時の視機能障害は高度であったが,ステロイドパルス療法を選択した結果,良好な経過を得た。
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