icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻9号

2022年09月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

質量分析法にてNocardia veterana角膜炎と診断された1例

著者: 小林瞳12 福岡秀記2 松本佳保里2 上田真由美2 外園千恵2

所属機関: 1京都第二赤十字病院眼科 2京都府立医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1247 - P.1251

文献購入ページに移動
要約 目的:質量分析法(MALDI-TOF MS)にてNocardia veterana角膜炎と診断された1例を報告する。

症例:78歳,男性。濾胞性リンパ腫に対してレナリドミドとリツキシマブで治療され,安定していた。7か月前に左眼の視力低下,異物感を自覚し近医を受診した。ヘルペス角膜炎と診断され,アシクロビル眼軟膏が開始されたが改善がみられず,4か月後に近医へ紹介となった。バラシクロビル内服,ベタメタゾン点眼,プレドニゾロン50mg内服を追加したが眼所見は改善せず,当院へ紹介となった。当院初診時の左視力は指数弁で,左角膜の実質浅層に特徴的な花弁様の白色沈着を認め,前房炎症と前房蓄膿も認められた。角膜感染を疑い角膜擦過物の検鏡と培養検査を施行し,グラム陽性桿菌が検出され,ガチフロキサシン点眼,セフメノキシム点眼,エリスロマイシン・コリスチン眼軟膏を開始したところ,感染巣の縮小と前房蓄膿の消失がみられ,自覚症状も改善した。培養検査および質量分析法にて原因菌はN. veteranaと同定され,薬剤感受性試験ではニューキノロン系抗菌薬に高度耐性を認めた。

結論:N. veteranaは,免疫不全患者において呼吸器感染症を引き起こすことが報告されているが,角膜炎を起こした症例は本邦では報告はない。本症例では角膜擦過物の検鏡と培養検査に加え,質量分析法を行うことが原因菌の同定に有用であった。

参考文献

1)Wilson JW:Nocardiosis:updates and clinical overview. Mayo Clin Proc 87:403-407, 2012
2)Orchard VA, Goodfellow M:Numerical classification of some named strains of Nocardia asteroides and related isolates from soil. J Gen Microbiol 118:295-312, 1980
spp. based on current molecular taxonomy. Clin Microbiol Rev 19:259-282, 2006
4)大楠清文:MALDI-TOF MSを用いた臨床微生物検査.臨床検査64:286-293,2020
5)大楠清文:質量分析技術を利用した細菌の新しい同定法.モダンメディア58:113-122,2012
keratitis. StatPearls Publishing, St. Petersburg, 2021
infections:case report and systematic review. New Microbes New Infect 39:100833, 2020
:case report and review. ID Cases 19:e00672, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?