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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科76巻9号

2022年09月発行

文献概要

特集 第75回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

眼内レンズ強膜内固定術後に毛様体解離が遷延し低眼圧黄斑症を発症した1例

著者: 鶴井雅美1 浅野泰彦1 恩田秀寿1 吉野正範1 小菅正太郎2 権昭致3

所属機関: 1昭和大学病院附属東病院眼科 2昭和大学江東豊洲病院眼科 3ごん眼科

ページ範囲:P.1309 - P.1314

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)強膜内固定術後に遷延した毛様体解離に伴い低眼圧黄斑症を発症し,小切開強膜毛様体縫合術が奏効した症例の報告。

症例:58歳,男性。X−3年に右眼IOL亜脱臼に対してIOL摘出術を施行後,X年3月に経毛様体扁平部硝子体切除術および眼内鑷子法によるIOL強膜内固定術を施行した。術中合併症はなく,術後視力は0.3(1.2×()cyl−2.50D 5°)を得たが,術後眼圧は4〜8mmHgで推移した。紹介元にて経過観察するも,低眼圧と歪視が遷延したため強膜内固定術後9か月目のX年12月に再度紹介受診した。再診時の右視力は0.07(0.9×+5.25D()cyl−1.75D 15°),眼圧は8mmHg,光干渉断層計(OCT)にて網脈絡膜皺襞,前眼部OCTで全周性の毛様体解離を認め,同月,強膜毛様体縫合術を行った。手術は2時・4時・8時・10時の4か所に強膜小切開を作製し,毛様体下液を排液後,同部位より6-0バイクリル®糸の針を眼内に穿刺し,幅約3mmで強膜-毛様体-強膜と通糸・結紮し,眼内を18%SF6ガスで置換した。毛様体解離と低眼圧黄斑症は軽快し,術後17か月で視力は0.8(1.5×+1.50D()cyl−1.50D 135°),眼圧は15mmHgであった。

結論:強膜内固定術後合併症として,毛様体解離に留意する必要がある。小切開強膜毛様体縫合術+SF6ガス置換術は有用な治療法であった。

参考文献

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5)浅野泰彦・和田悦洋・齋藤雄太・他:眼外鑷子ガイド法による眼内レンズ強膜内固定術の手術成績の検討.日眼会誌125:902-910,2021
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14)坂田 礼・三嶋弘一・愛新覚羅 維・他:前眼部光干渉断層計を用いた毛様体解離の診断と外科的治療法の選択.日眼会誌122:875-887,2018
15)中村ゆい・廣瀬浩士・鬼頭 勲:最終的に眼内レンズ縫着術が奏効した外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症の1例.臨眼74:1304-1308,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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