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特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著
テノン囊下麻酔と球後麻酔との経時的なBモードエコー所見の変化および眼球に与える影響の比較
著者: 井上達人1 井上亮1 石橋朋幸1 森本裕子1 中島浩士1 恵美和幸1
所属機関: 1大阪労災病院眼科
ページ範囲:P.1262 - P.1268
文献購入ページに移動方法:黄斑疾患(黄斑前膜,黄斑円孔)に対し硝子体手術を施行した22例24眼を対象とした。12眼ずつテノン囊下麻酔と球後麻酔を施行し,麻酔投与前後においてBモードエコー検査,眼球運動のスコアリング,眼圧測定を行った。術中の疼痛は11段階のNumerical Rating Scale(NRS)を用い術後に評価した。
結果:テノン囊下麻酔群では,投与直後において眼球後壁の視神経付着部に膨隆する低輝度エコー像を12例中11例で認めた。一方,球後麻酔群では,投与直後において筋円錐内全体に広がる低輝度エコー像を12例中5例に認めた。眼球運動スコアは,投与5分後においてテノン囊下麻酔群でより眼球運動が抑制される傾向にあったが,投与直後,5分後,10分後,15分後の各時点で有意差はなかった(p=0.67,0.027,0.20,0.37)。投与前,投与直後,投与10分後の眼圧に有意差はなかったが(p=0.58,0.52,0.48),テノン囊下麻酔群の1例で投与直後に45.6mmHgに上昇した。NRSはテノン囊下麻酔群で0.83±1.5,球後麻酔群では1.7±1.7と鎮痛効果に有意差はなかったが(p=0.42),NRS=0は前者で8例,後者で4例であった。
結論:テノン囊下麻酔は薬液分布の再現性が高く,より早期から安定した眼球運動抑制と鎮痛効果を発現する傾向を認めた。ただしテノン囊下麻酔では,投与直後の急激な眼圧上昇の可能性に注意する必要がある。
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