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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻2号

2023年02月発行

臨床報告

Soemmering輪を伴う毛様体ブロックによる続発閉塞隅角の1例

著者: 池村有且1 飯田嘉彦1 高木堅太郎1 柳田智彦1 庄司信行1

所属機関: 1北里大学病院眼科

ページ範囲:P.244 - P.248

文献概要

要約 緒言:水晶体囊赤道部に残存した水晶体上皮細胞が形成するSoemmering輪が一因と考えられる毛様体ブロックの1例を経験したので報告する。

症例:85歳,女性。前医で10年以上前に両眼白内障手術を受けた。落屑はあったが術中合併症はなく,眼内レンズ(IOL)は両眼とも囊内固定であった。1週間前の受診時に右眼の浅前房と眼圧上昇を認め,レーザー虹彩切開術(LI)が施行された。いったん隅角は開大したが,再び浅前房と眼圧上昇を生じたため,当院を紹介され受診した。受診時の右眼圧は62mmHgで毛様体ブロックによる隅角閉塞を考え,同日硝子体手術を施行した。術中,IOLの偏心は明らかではなかった。術後,前房は深くなり眼圧は8mmHgと下降したが,1週後に再度浅前房と隅角閉塞を認め,眼圧は34mmHgに上昇し,LI部を白濁肥厚した構造物が閉塞しているのを確認した。性状,部位からSoemmering輪と推定された。チン小帯の脆弱化で水晶体囊が前方に偏位し,Soemmering輪が虹彩裏面と接触することで房水の通過障害を生じて後房圧が上昇したと考えた。周辺虹彩切除術(PI)を施行したところ前房は深くなり,眼圧は12mmHgに下降し安定している。

結論:Soemmering輪が主因と考えられる毛様体ブロックの症例を経験した。チン小帯が脆弱な症例では,硝子体切除術による毛様体ブロック解除後にもIOLの前方偏位とともにSoemmering輪により虹彩裏面で房水の流れがブロックされてしまうことがある。また,切開創が小さなLIではSoemmering輪による閉塞が生じる可能性があり,大きめのPIにより前後房の交通を保つ必要があると考えた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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