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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻3号

2023年03月発行

文献概要

臨床報告

HIF-PH阻害薬投与後に糖尿病黄斑浮腫が増悪した1例

著者: 浦橋佑衣1 小島祥1 幸野理久1 井上俊洋1

所属機関: 1熊本大学大学院生命科学研究部眼科学講座

ページ範囲:P.324 - P.328

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要約 目的:低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬の投与後に糖尿病黄斑浮腫が増悪した1例を経験したので報告する。

症例:61歳,女性。近医より,糖尿病網膜症または高血圧性網膜症の精査加療目的に当科を紹介され受診となった。

所見:初診時,斑状・しみ状出血散在,著明な硬性白斑を認め,光干渉断層撮影では黄斑近傍に浮腫を認めた。また,蛍光眼底造影検査では,後極に網膜細動脈瘤と蛍光漏出が多発し,無灌流領域も散在しており,糖尿病網膜症および糖尿病黄斑浮腫の診断となった。全身状態の改善に伴い糖尿病網膜症は改善傾向であり,網膜細動脈瘤に対する複数回の網膜光凝固術施行により,黄斑浮腫は中心窩には及ばず経過していた。しかし,初診から3年後,両眼黄斑浮腫の増悪を認めた。内科で腎性貧血の治療としてエリスロポエチン製剤からHIF-PH阻害薬に切り替えた後に黄斑浮腫の増悪を認めたため,HIF-PH阻害薬の関与が疑われ薬剤を中止したところ,黄斑浮腫は速やかに改善した。

結論:今回,HIF-PH阻害薬の投与後に糖尿病黄斑浮腫が増悪した貴重な1例を経験した。新薬の有害事象の検討に関しては,内科との連携が特に重要である。

参考文献

1)Tan GS, Cheung N, Simó R et al:Diabetic macular oedema. Lancet Diabetes Endocrinol 5:143-155, 2017
2)若林美宏:The role of VEGF in the phathogenesis of diabetic retinopathy and anti VEGF therapy.東京医科大学雑誌73:347-354,2015
3)内田啓子・南学正臣・阿部雅紀・他:日本腎臓学会 HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation.日本腎臓学会誌62:711-716,2020
4)Fukui K, Shinozaki Y, Kobayashi H et al:JTZ-951(enarodustat), a hypoxia-inducibe factor prolyl hydroxylase inhibitor, stabilizes HIF-α protein and induces erythropoiesis without effects on the function of vascular endothelial growth factor. Eur J Pharmacol 859:172532, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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