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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻3号

2023年03月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

サトラリズマブを導入した抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の高齢女性の1例

著者: 篠原大輔1 林孝彰1 徳久照朗1 須田真千子2 中野匡3

所属機関: 1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科 2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター脳神経内科 3東京慈恵会医科大学眼科学講座

ページ範囲:P.352 - P.360

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要約 目的:視神経脊髄炎スペクトラム障害に対する再発予防を目的として,抗IL-6受容体阻害薬(サトラリズマブ)が導入された抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視神経炎の高齢女性の1例を報告する。

症例:81歳女性が突然の左眼視野障害を自覚し,発症第7病日に精査目的で受診した。

所見と経過:視力は右(0.9),左光覚なしで,相対的瞳孔求心路障害は左眼で陽性であった。頭部・眼窩MRI検査によるSTIR画像で左視神経の高信号を認めた。抗AQP4抗体陽性が確認され,抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断された。ステロイドセミパルス療法に加え,免疫吸着療法が施行され,左視力は(0.07)に改善した。後療法としてステロイド内服漸減後,維持期治療として低用量内服治療を1年9か月間続け終了した。その1年4か月後,右眼の発症と左眼の再発がみられ,再度同様の急性期治療が施行され,ステロイド内服漸減中にサトラリズマブの投与が開始された。その後,経過観察可能であった5か月間再発はなかったが,さらにその約5か月後,既存の腸閉塞と心疾患が悪化し死亡した。

結論:両眼性の抗AQP4抗体陽性視神経炎に対してサトラリズマブを投与した高齢女性例を経験した。投与後は,治療効果だけでなく副作用についても十分なモニタリングが重要と考えられた。

参考文献

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12)三須建郎:多発性硬化症・視神経脊髄炎の最新治療.神経治療学38:150-154,2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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