icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻3号

2023年03月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

後頭葉の梗塞による視覚保続および変形視の1例

著者: 松浦一貴1 寺坂祐樹1 今岡慎弥1

所属機関: 1野島病院眼科

ページ範囲:P.363 - P.367

文献購入ページに移動
要約 緒言:視覚保続とは,視覚対象が取り除かれた後にも視知覚が持続する現象であり,対象の除去後にもそれと同じ像が見える時間的視覚保続(palinopsia)と,対象があるべき範囲を超えて多数または拡散して見える空間的視覚保続(polyopia)とがある。筆者らは,左脳梗塞に伴い視覚保続,変形視を訴えた症例を経験した。

症例:78歳男性が,動く物体がストロボ写真のように見えると気づいた(polyopia)。動的量的視野検査にて左同名半盲が検出された。MRIでは右後頭葉に浮腫を伴う新鮮な梗塞巣が検出された。数日の間に,数時間前に見た車が見える(palinopsia)こと,人の顔が歪んで見える(変形視:metamorphopsia)ことを自覚した。

考按:視覚保続は稀な現象であり,主に後頭葉障害に伴い障害部位の対側に出現するとされるが,発現機構は十分に解明されていない。本症例では半側相貌変形視を伴った。その責任病巣は後頭葉から脳梁膨大部の障害とされる。

結論:高次視機能障害による“見えにくさ”の診断は,一般眼科医には不得手な領域であり,その診断および治療は神経内科医に委ねられてよい。しかし,一般の神経科医にとってもなじみのある病態ではないことから,適切なコメントとともに紹介する必要がある。

参考文献

1)杉山 健・持田英俊・唐沢秀治・他:Palinopsiaを主症状としたテント髄膜腫の1例.Neurologia medico-chirurgica 29:324-327,1989
2)深田忠次・高橋和郎:視覚保続Palinopsia—自験4例および34文献例の検討.精神医学24:383-389,1982
3)當間圭一郎・田口敬子・池田昭夫・他:てんかん性視覚保続発作に内側側頭葉と頭頂葉の関与が示唆された1例.臨床神経学52:651-655,2012
4)Lefébre C, Kölmel HW:Palinopsia as an epileptic phenomenon. Eur Neurol 29:323-327, 1989
5)Cummings JL, Syndulko K, Goldberg Z et al:Palinopsia reconsidered. Neurology 32:444-447, 1982
6)Blythe IM, Bromley JM, Ruddock KH et al:A study of systematic visual perseveration involving central mechanisms. Brain 109:661-675, 1986
7)Maillot F, Belin C, Perrier D et al:Persévération visuelle et palinopsie:une pathologie de la mémoire visuelle?[Visual perseveration and palinopsia:a visual memory disorder?]. Rev Neurol(Paris)149:794-796, 1993
8)石合純夫:視覚保続.神経内科36:347-353,1992
9)齋藤有紀・松永晶子・山村 修・他:脳梁膨大部右側梗塞により左半側相貌変形視をきたした左ききの1例.臨床神経学54:637-642,2014
10)天野 総・桂 永行・山形宗久:脳梗塞により変形視をきたした2症例.八戸赤十字病院紀要11:17-22,2014
11)永石彰子・成田智子・権藤雄一郎・他:左視野の顔面および単純な図形の変形視を呈した脳梁膨大部右側梗塞の1例.臨床神経学55:465-471,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら