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特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[2] 原著
白内障手術後に近見作業困難を呈した強度・病的近視患者へのロービジョンケアの1例
著者: 山田明子1 堀寛爾12 松井孝子1 亀山尚美1 清水朋美2
所属機関: 1国立障害者リハビリテーションセンター病院リハビリテーション部ロービジョン訓練 2国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部眼科
ページ範囲:P.491 - P.498
文献購入ページに移動症例:80代,男性。強度・病的近視。裸眼での接近視で読み書きをする習慣があった。他院での白内障手術後,術前に裸眼での接近視や拡大鏡(24D)の併用で可能であった読み書きに困難を訴え,国立障害者リハビリテーションセンター病院を受診した。術前の矯正視力は左右ともに0.01,術後は右0.04左0.03であった。屈折値は等価球面値で,術前右−20.00D,左−18.25Dから術後 右−0.75D,左−0.375Dへ変化し,術前のように接近視が可能な眼鏡の処方を強く希望された。強度近視で得られていた最大視認力をハイパワープラスレンズ眼鏡で再現するためには高加入が必要であったが,高加入では作業距離が短く,書字困難と読書時の疲労を示した。そこで,高拡大が可能な拡大読書器を紹介したが,接近視の希望が強く,選定に難渋した。複数回の試行で両眼+11.25Dのハイパワープラスレンズ眼鏡を処方し,近見作業困難が改善した。この症例から,白内障手術後に視力の大幅な改善が困難な強度・病的近視症例では,術後屈折値が正視付近となると,接近視ができないという視環境の変化から見えにくさを訴えることが示された。また,強度近視で得られていた最大視認力を,術後に眼鏡によって再現するには限界があることがわかった。
結論:術後もロービジョンとなる可能性のある強度・病的近視症例の白内障手術では,術前の最大視認力を考慮した近視を残した術後屈折値の選択が必要なことが示唆された。
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