icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻5号

2023年05月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著

卵円孔開存が原因と考えられた若年性網膜中心動脈閉塞症の1例

著者: 石橋慧一1 木崎順一郎1 和田悦洋1 恩田秀寿1

所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.633 - P.638

文献購入ページに移動
要約 緒言:網膜中心動脈閉塞症(CRAO)は,血栓や塞栓により,網膜動脈が閉塞することで網膜の循環障害をきたす疾患である。卵円孔開存(PFO)は成人の2〜3割にみられるとされており,通常は症状なく経過するが,脳梗塞を発症する場合もある。これを奇異性脳塞栓症という。今回筆者らは,PFOに合併したCRAOの1例を経験したので報告する。

症例:30歳,女性。もともとの矯正視力は両眼とも1.2であった。突然の左眼の視力低下を自覚し,翌日,昭和大学病院附属東病院を紹介され受診した。矯正視力は右1.2,左は手動弁であった。左眼の視野は中心下方にわずかに残存するのみであった。網膜内層は白色浮腫状でcherry red spotを認めた。蛍光眼底造影で網膜中心動脈の充塡遅延を認め,CRAOと診断した。同日よりウロキナーゼ点滴静注,副腎皮質ステロイド点滴静注,星状神経節ブロック,高圧酸素療法を施行し,2か月後に左眼矯正視力0.15まで改善した。原因検索にて,血管炎や内頸動脈狭窄を認める所見はなかったが,脳MRIにて微小な虚血巣が散在しており,経胸壁および経食道エコーにてPFOを認め,これが原因の可能性が考えられた。PFOに対してはリバーロキサバン内服を開始し,初診から3か月後に閉鎖術を行った。

結論:若年者のCRAOの症例は卵円孔開存も一因となりうるため,それを念頭に置いて検索する必要があると考える。

参考文献

1)Ay H, Furie KL, Singhal A et al:An evidence-based causative classification system for acute ischemic stroke. Ann Neurol 58:688-697, 2005
2)市田蕗子・赤木禎治・池田智明・他:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).[http://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_h.pdf(閲覧日:2023年3月13日)]
3)Mojadidi MK, Zaman MO, Elgendy IY et al:Cryptogenic Stroke and Patent Foramen Ovale. J Am Coll Cardiol 71:1035-1043, 2018
4)伊藤孝明・久木野竜一・高原正和・他:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン.日本皮膚科学会雑誌121:2431-2448,2011
5)日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会(編):脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017対応].61-87,協和企画,東京,2017
6)大鹿哲郎・園田康平・近藤峰生・他:眼科学(第3版).362-368,文光堂,東京,2021
7)Madike R, Cugati S, Chen C:A review of the management of central retinal artery occlusion. Taiwan J Ophthalmol 12:273-281, 2022
8)荒賀 崇・萩原悠太・柳澤俊之・他:網膜中心動脈閉塞症を契機に発見されたcalcified amorphous tumorによる多発脳塞栓症の1例.Neurosonology 32:19-22,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?