icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻6号

2023年06月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[4] 原著

発症直後から瘢痕治癒過程まで観察した外傷性網脈絡膜断裂の1例

著者: 加藤皓一12 髙木宣典1 岡あゆみ12 松本拓12 海津嘉弘1 久冨智朗12 内尾英一2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院眼科 2福岡大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.745 - P.751

文献購入ページに移動
要約 目的:眼球打撲により広範な網脈絡膜断裂をきたした症例に対し,多機能広角眼底撮影装置を用いて経時的に眼底を後極から周辺部まで詳細に撮影し,経過観察できたので報告する。

症例:29歳,女性。正面から顔面を殴打され受傷した。左眼瞼の高度腫脹を認めるが,中間透光体は清明であった。眼底は,左眼は視神経乳頭内下方に一象限を超える広範な網脈絡膜断裂および出血を認め,強膜の露出を認めた。明らかな網膜剝離は認めず,後部硝子体剝離も起きていなかった。

結果:硝子体出血は限局的で,網脈絡膜断裂はあるものの網膜剝離を認めなかったことから,経過観察を行った。光干渉断層計では,裂孔周囲に網膜剝離や脈絡膜新生血管は認めず,網脈絡膜断裂部に架橋的に緩徐なグリオーシスによる線維化を生じた。経過中,網膜上や硝子体への増殖性変化は認めず,保存的に経過観察可能であった。広角眼底撮影装置でも周辺部網膜まで経時的に撮影記録を行ったが,新たな裂孔などは認めなかった。

結論:後部硝子体未剝離症例に外傷性に一象限を超える広範な網脈絡膜断裂を起こした症例を経験し,保存的に経過をみた。多機能広角眼底撮影装置は経時的に後極から周辺部網膜まで詳細に観察が可能で,経過観察や治療方針決定に有用であった。

参考文献

1)秋谷 忍:眼外傷 総論.増田寛次郎(編):眼科学大系〔8A〕.3-8,中山書店,東京,1995
2)山本早弥子・泉 幸子・清水 潔・他:昭和大学眼科における眼外傷の検討(平成11年).日本職業・災害医学会会誌53:16-20,2005
3)Viestenz A:Rupture of the choroid after eyeball contusion-an analysis based on the Erlangen Ocular Contusion Registry(EOCR). Klin Monbl Augenheilkd 221:713-719, 2004
4)Moon K, Kim KS, Kim YC:A Case of expansion of traumatic choroidal rupture with delayed-developed outer retinal changes. Case Rep Ophthalmol 4:70-75, 2013
5)Yonemoto J, Ideta H, Tanaka S et al:The age of onset of posterior vitreous detachment. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 232:67-70, 1994
6)Ahmed F, Tripathy K:Posterior vitreous detachment. StatPearls Pubishing, Treasure Island, 2022
7)角南健太・家久来啓吾・森下清太・他:鈍的外傷により巨大鋸状縁断裂を形成するも網膜剥離をきたさなかった1例,眼科手術28:647-650,2015
8)坂本泰二・久冨智朗:創傷治癒 網膜硝子体の組織反応 細胞生物学的な立場から.NEW MOOK眼科,120-127,2001
9)Tirth J, Shah MD, Stiff HA et al:Choroidal Rupture with Choroidal Neovascularization. Ophthalmology and Visual Sciences, Posted June 10, 2020
10)Secrétan M, Sickenberg M, Zografos L et al:Morphometric characteristics of traumatic choroidal ruptures associated with neovascularization. Retina 18:62-66, 1998
11)Wood CM, Richardson J:Chorioretinal neovascular membranes complicating contusional eye injuries with indirect choroidal ruptures. Br J Ophthalmol 74:93-96, 1990
12)Horie S, Ohno-Matsui K:Progress of Imaging in Diabetic Retinopathy—From the Past to the Present. Diagnostics(Basel) 12:1684, 2022

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら