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特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
上皮型ヘルペス角膜炎症例の実質型ないし内皮型への移行に関する検討
著者: 塩谷雅1 川村朋子1 原田一宏1 内尾英一1
所属機関: 1福岡大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.892 - P.897
文献購入ページに移動対象と方法:2019年1月〜2021年3月に福岡大学病院眼科を受診し,上皮型ヘルペス角膜炎と診断された症例55例55眼について,実質型ないし内皮型へ移行した症例(移行群)と,上皮型のみで寛解した症例(寛解群)に分け,性差,年齢,経過観察期間,ヘルペス角膜炎の既往,角膜移植の既往,発症時ステロイド点眼・内服の使用,糖尿病・アトピー性皮膚炎の既往について差がないか,診療録を用いて後ろ向きに検討した。
結果:寛解群は41例41眼(男性23例,女性18例),平均(±標準偏差)年齢66.1±19.0歳,移行群は14例14眼(男性9例,女性5例),平均年齢62.6±16.2歳であった。両群に差は認めなかった。平均経過観察期間は,寛解群は542.9±394.7日,移行群では291.3±309.2日と寛解群で有意に長かった(p<0.05)。ヘルペス角膜炎の既往は寛解群41眼中11眼(27%),移行群14眼中10眼(71%)と移行群に有意に多く(p<0.01),平均既往回数も寛解群で0.73回,移行群で2.57回と移行群で有意に多かった(p<0.01)。角膜移植の既往は寛解群41眼中19眼(46%),移行群14眼中1眼(7%)と寛解群に有意に多かった(p<0.01)。発症時ステロイド点眼・内服,糖尿病・アトピー性皮膚炎の既往について両群に有意差は認めなかった。
結論:ヘルペス角膜炎の既往が複数回ある症例では,上皮型,実質型,内皮型のどの病型でも再発する可能性があり,角膜移植既往症例では上皮型の再発に終始し,実質型もしくは内皮型への移行が生じにくいことが示唆された。
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