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特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
眼窩内壁骨折整復術直後に視力障害をきたした1例
著者: 野口魁斗1 高木勇貴2 穂積健太2 田邊吉彦2 小島隆司3
所属機関: 1飯田市立病院眼科 2JCHO中京病院眼科 3名古屋アイクリニック
ページ範囲:P.907 - P.912
文献購入ページに移動症例:79歳,男性。転倒外傷による左眼窩内側壁骨折治療のため形成外科を受診。CT上,外眼筋や軟部組織の嵌頓は認めないが,外転制限および複視を認め,1週間以上改善がみられず,手術適応となった。術前の矯正視力(小数視力)は1.0であった。術直後より視力障害を訴え,精査のためCTが施行されたが血腫などは認めなかった。プレートによる視神経の圧迫が原因と疑われ,プレート抜去が施行された。その後も視力が改善しなかったため,当科紹介となった。診察時の所見は左眼光覚−,直接対光反射−,間接対光反射+,相対的瞳孔求心路障害陽性,前眼部や眼底に特記すべき所見はなかった。造影MRI上明らかな視神経の断裂は認めなかったが,辺縁が不整な部位があり,医原性の外傷性視神経症を疑いステロイドパルスを1クール施行した。その後は保存的加療の方針となり,術後6か月時点で矯正視力は0.2まで改善している。
結論:眼窩骨折術後に眼窩コンパートメント症候群のため視力障害をきたした症例報告はあるが,それ以外の原因で術直後に視力障害をきたす症例は非常に稀である。術直後に視力障害をきたしたとする症例報告2例ではプレート抜去などの眼窩内減圧により視力は改善したとされている。本報告では視力障害の発覚後早期にプレートの抜去が施行されたが,視力改善が乏しく,術中に視神経が直接損傷されていたと考えられた。
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