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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻7号

2023年07月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

自然瞳孔での眼球生体計測値による調節麻痺下等価球面屈折値の推測

著者: 加藤裕花1 成田真帆1 森隆史1 松野希望1 則川晃希1 笠井彩香1 新田美和12 齋藤章子1 橋本禎子13 石龍鉄樹1

所属機関: 1福島県立医科大学眼科学講座 2太田西ノ内病院眼科 3桜水さかい眼科

ページ範囲:P.923 - P.928

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要約 目的:筆者らは,これまで光学的生体測定装置により計測した非調節麻痺下の眼軸長(AL)と平均角膜曲率半径(ROC)から調節麻痺下等価球面屈折値(cSE)を推測する推定式を報告してきた。本研究では,前房深度(ACD)や水晶体厚(LT)を加え,予測精度向上を目指し検討を行った。

対象と方法:対象は,1%アトロピン点眼液1日2回7日間による調節麻痺下屈折検査を行った器質的眼疾患を有さない3〜4歳児48例96眼である。調節麻痺の前後にIOLマスター® 700で眼球形態検査とTONOREF®ⅡでcSEの計測を行った。調節麻痺前のAL,ROC,ACD,LTの逆数を説明変数,cSEを目的変数とし,ステップワイズ重回帰分析を行った。また,解析から得られた推定式による等価球面屈折値の推測値(eSE)とcSEとの差を検討した。

結果:ステップワイズ法ではAL,ROC,ACDの3項目が採択された。AL,ROC,ACDでの推定式は,eSE=1200.50/AL−317.97/ROC−8.89/ACD−8.88(R2=0.93)であった。この式によるcSEとの誤差は0.5D未満55%,1.0D未満86%であった。比較のため,今回のデータセットを用いて既報に基づきAL,ROCに月齢(M)を加えた推定式を作成し,式はeSE=1147.42/AL−303.33/ROC−34.03/M−10.35(R2=0.92)となった。誤差は0.5D未満48%,1.0D未満85%であり,今回作成した推測式でより精度が高いと考えられた。

結論:自然瞳孔でのALとROCに加え,ACDをパラメータに加えることで,推定式の精度は向上した。

参考文献

1)森 隆史・菅原朝子・丹治弘子・他:IOLマスターを用いた調節麻痺下屈折値の推測.眼臨紀5:252-255,2012
2)森 隆史・近藤剛史・橋本禎子・他:眼軸長と角膜曲率半径による調節麻痺下等価球面屈折値の推測.眼臨紀7:136-138,2014
3)森 隆史・近藤剛史・橋本禎子・他:日本人3歳児における眼軸長と角膜曲率半径による調節麻痺下等価球面屈折値の推測.眼臨紀8:571-575,2015
4)森 隆史・松野希望・比金真菜・他:眼球形態検査を用いた調節麻痺下球面屈折値の推測—月齢を考慮した予測式.眼臨紀12:392-395,2019
5)成田真帆・森 隆史・鈴木美香・他:3〜8歳児における眼軸長と角膜曲率半径と月齢による等価球面屈折値の予測式の検討.眼臨紀(印刷中)
6)Arnold RW, Donahue SP, Silbert DI et al:AAPOS uniform guidelines for instrument-based pediatric vision screen validation 2021. JAAPOS 26:1.e1-1.e6, 2022
7)比嘉利沙子・魚里 博・大内雅之・他:眼内レンズ度数計算式による白内障術後予測屈折誤差の比較.臨眼67:687-692,2013
8)Amulya Padmini HM, Dhananjaya KH, Budihal SB et al:A comparative study on accuracy of SRK-T and Haigis formulas in IOL power calculation in axial myopes undergoing cataract surgery. J Pharm Bioallied Sci 14:S907-S910, 2022
9)西久保誠司・瀬谷剛史・村上貴史・他:SRK/T式とHaigis式の予測屈折値の差の検討.日視能訓練士協誌45:271-276,2016
10)Gordon RA, Donzis PB:Refractive development of the human eye. Arch Opthalmol 103:785-789, 1985
11)新田千賀子・武村玉緒・新田正昭:成長期(3〜18歳)における屈折要素の年齢的変化.眼臨紀12:298-306,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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