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特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著
オオスズメバチによる角膜刺傷の1例
著者: 寺本謙典1 畑真由美1 河越龍方1
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学眼科学講座
ページ範囲:P.1017 - P.1023
文献購入ページに移動症例:80歳,男性。2021年9月下旬左眼角膜をオオスズメバチに刺され,近医を受診し同日聖マリアンナ医科大学病院眼科を紹介され受診した。初診時の左視力は光覚弁であった。左眼の角膜混濁が強く,散瞳不良,眼底透見不可であった。受傷10時間後に前房洗浄を施行した。術後,抗菌薬とステロイドの点滴および点眼にて加療した。術後角膜混濁が遷延し,デスメ膜皺襞と角膜上皮欠損が出現した。前房内炎症が増悪し,硝子体混濁が出現したため,受傷5日後水晶体および硝子体同時手術を施行した。これまで確認できなかった前囊損傷を認めた。術中所見で眼底に明らかな異常はなかった。
受傷後4か月の時点で,角膜上皮および内皮障害,高眼圧が遷延しており,点眼で加療している。今後,角膜移植や濾過手術が必要になる可能性がある。
結論:オオスズメバチの毒素は強力であり,一般的に予後が悪いことが知られている。刺された深さ,注入された毒液量,治療までの時間などが関係していると考えられる。
本症例では刺傷後早期より積極的な治療を行ったにもかかわらず予後は悪かった。早期より手術などを行うことに加え,トリアムシノロンアセトニドの硝子体注射やステロイドパルス療法など別の治療法が必要になると考えられる。
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