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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻8号

2023年08月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

Panton-Valentine leukocidin産生MRSAによる眼窩蜂窩織炎

著者: 多田羅祐介13 小木曽正博1 曽我部由香2 中野裕貴3 鈴間潔3

所属機関: 1四国こどもとおとなの医療センター眼科 2三豊総合病院眼科 3香川大学医学部眼科学講座

ページ範囲:P.1067 - P.1072

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要約 目的:眼窩蜂窩織炎は時に重篤な視機能障害を引き起こす急性化膿性炎症である。今回Panton-Valentine leukocidin(PVL)を産生するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による眼窩蜂窩織炎をわが国で初めて経験したため報告する。

症例:61歳,女性。右眼瞼腫脹,疼痛を主訴に香川大学医学部附属病院眼科へ紹介され受診した。初診時,右上眼瞼の高度の発赤腫脹,眼球結膜の充血と浮腫,眼球突出および眼球運動制限を認めた。また血液検査でC反応性蛋白および白血球の上昇,CTにて眼窩内炎症を疑う所見があり,眼窩蜂窩織炎として入院となった。眼脂培養にてPVLを産生するMRSAが検出されたため,抗MRSA薬およびカルバペネム系抗菌薬の点滴投与で加療したが反応は悪く,改善まで10日間を要した。

結論:PVLはMRSAが特徴的に産生する毒素で,白血球を特異的に障害し重症化しやすい。今回,PVL産生MRSAを起炎菌として健常者にもかかわらず重症化し,症状改善に時間を要した眼窩蜂窩織炎を経験した。難治な眼窩蜂窩織炎ではPVL産生菌の存在を念頭に置き,適切な抗菌薬の選択が必要である。

参考文献

1)山中亜規子・渡辺彰英:眼窩蜂巣炎の対処法.あたらしい眼科35:1641-1645,2018
2)福田夏稀・中南秀将・赤須友美・他:病院の外来患者におけるPanton-Valentine leukocidine(PVL)陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の流行状況.医療薬学47:293-300,2021
3)山崎 修:Panton-Valentine leukocidin(PVL).岡山医学会雑誌119:87-89,2007
4)山本達男・種池郁恵・中川沙織・他:Panton-Valentineロイコシジン陽性の市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の出現—感染症の現状と細菌学的特徴.日本化学療法学会雑誌52:635-653,2004
5)Nakaminami H, Ozawa K, Sasai N et al:Current status of Panton-Valentine leucocidin-positive methicillin-resistant Staphylococcus aureus isolated from patients with skin and soft tissue infections in Japan. J Dermatol 47:1280-1286, 2020
6)Bispo PJM, Ung L, Chodosh J et al:Hospital-associated multidrug-resistant MRSA lineages are trophic to the ocular surface and cause severe microbial keratitis. Front Public Health 8:204, 2020
7)山本達男・高野智洋・Baranovich T・他:基礎・臨床の両面からみた耐性菌の現状と対策6 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA).モダンメディア54:95-103,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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