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臨床報告
小児の特発性動眼神経麻痺の1例
著者: 平井真理子1 西脇弘一1
所属機関: 1天理よろづ相談所病院眼科
ページ範囲:P.1119 - P.1124
文献購入ページに移動要約 目的:小児の特発性動眼神経麻痺を経験したので報告する。
症例:患者は4歳,男児。起床時に複視を自覚し,近医を受診したところ外斜視を指摘され,精査目的に当院を紹介され受診した。
所見:視力は右(1.0),左(0.9)。左眼は散瞳固定で対光反射は消失しており,調節障害を認めた。右眼を固視眼とする外斜視を認めたが,明らかな眼球運動制限は確認できなかった。感冒症状などの前駆症状はなく,血液検査や画像検査では原因を特定できなかった。無治療で経過観察を行い,徐々に内転・下転障害と外・上斜視の増悪を認めたが,発症14日後より改善傾向を認めた。輻湊を除き眼球運動障害はほぼ消失したが,瞳孔径・対光反射の左右差や調節障害は残存し,羞明の後遺症を生じた。
結論:小児の特発性動眼神経麻痺は稀な疾患であり,確立した治療法はない。比較的予後が良いとの報告があるが,後遺症を残す症例もあり,治療・予後についてはさらなる検討を要する。
症例:患者は4歳,男児。起床時に複視を自覚し,近医を受診したところ外斜視を指摘され,精査目的に当院を紹介され受診した。
所見:視力は右(1.0),左(0.9)。左眼は散瞳固定で対光反射は消失しており,調節障害を認めた。右眼を固視眼とする外斜視を認めたが,明らかな眼球運動制限は確認できなかった。感冒症状などの前駆症状はなく,血液検査や画像検査では原因を特定できなかった。無治療で経過観察を行い,徐々に内転・下転障害と外・上斜視の増悪を認めたが,発症14日後より改善傾向を認めた。輻湊を除き眼球運動障害はほぼ消失したが,瞳孔径・対光反射の左右差や調節障害は残存し,羞明の後遺症を生じた。
結論:小児の特発性動眼神経麻痺は稀な疾患であり,確立した治療法はない。比較的予後が良いとの報告があるが,後遺症を残す症例もあり,治療・予後についてはさらなる検討を要する。
参考文献
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