文献詳細
文献概要
特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
低加入度数分節型眼内レンズ挿入後の視力不良例にNd-YAGレーザーによる前囊放射状切開が奏効した1例
著者: 小野恭子1 細川満人1 岡野内俊雄1
所属機関: 1倉敷成人病センター眼科
ページ範囲:P.1129 - P.1133
文献購入ページに移動症例:81歳,女性。2021年に白内障手術目的で当院を紹介され受診した。両眼とも−3.0Dの軽度近視であり,強度の乱視や高次収差はなかった。白内障以外の眼疾患は認めなかった。IOLは両眼ともレンティス コンフォート®を選択して挿入した。術後1週の視力は右0.9(1.0),左0.6(0.7p),術後2カ月の視力は右1.5p(矯正不能),左0.6(0.7)と,左眼は裸眼・矯正視力ともに不良であった。散瞳検査で左眼のみに明らかな前囊収縮を認めた。前眼部光干渉断層計(CASIA® 2:TOMEY)でIOL偏心量の指標であるdecentration値が右0.14mm,左0.27mmと,左眼でやや高値を示したものの正常範囲であった。前囊収縮による眼内収差の増大が視力不良の一因の可能性を考え,Nd-YAGレーザーで放射状に前囊切開したところ,1週後の左視力は1.0(1.2)に改善し,decentration値は0.20mmとなった。10か月後の左視力は(1.0),decentration値は0.16mmであった。
結論:レンティス コンフォート®挿入眼における術後視力不良症例において前囊収縮を認める場合には,Nd-YAGレーザーによる前囊放射状切開を行うことで眼内収差が軽減され,視力の向上が期待できる可能性がある。
参考文献
掲載誌情報