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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻9号

2023年09月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

ブラッドパッチ治療によって改善した交通外傷後の調節麻痺の1例

著者: 土野圭1 禅野誠1 恩田秀寿1

所属機関: 1昭和大学病院眼科

ページ範囲:P.1178 - P.1183

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要約 目的:交通外傷後に複視・調節麻痺を主訴に受診し脳脊髄液漏出症と診断され,ブラッドパッチ治療を実施し,症状が改善した症例を経験した。

症例:14歳の女児が自転車で走行中に乗用車と衝突し,ボンネットに跳ね上げられ受傷した。頭部CTで異常を認めず経過観察となっていたが,受傷約1週間後から立体感の異常,ぼやけ,複視,頭頸部痛,めまい,聴覚異常,頭痛を自覚し,精査加療のため当院を紹介され受診となった。

所見:初診時,両眼矯正視力は右1.2,左1.2であり,前眼部・中間透光体・眼底に明らかな異常は認められなかった。アコモドメーターで調節緊張と調節力の低下を認めた。両眼単一注視野検査では上方視での複視を認めた。眼窩下壁骨折はCT画像上認めなかったものの,上方複視症状からwhite-eyed blowout fractureが疑われ,受傷54日目に右眼窩下壁骨折整復術を施行し複視は改善した。その後,脳脊髄液漏出症が判明し,受傷142日目にブラッドパッチ治療を実施した。ブラッドパッチ治療から1か月後の再診時には調節麻痺が改善し,不定愁訴も改善していた。

結論:交通外傷による眼外傷や頭部外傷後に複視や調節麻痺,その他の不定愁訴を訴えるものの原因がはっきりしない場合,脳脊髄液漏出症の可能性も念頭に置き精査する必要がある。

参考文献

1)脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会:脳脊髄液減少症ガイドライン2007.15-18,メディカルレビュー社,東京,2007
2)西尾 実・山田和雄:ブラッドパッチ療法.医学のあゆみ235:771-774,2010
3)嘉山孝正(監):脳脊髄液漏出症診療指針.中外医学社,東京,2019
4)山上明子:脳脊髄液減少による視機能異常.神経眼科39:26-33,2022
5)相原隆一:White-eyed blowout fractureの1例.頭頸部外科14:253-260,2004
6)恩田秀寿・植田俊彦:見落としやすい眼窩底骨折の2症例.眼臨紀4:752-756,2011
7)筒井康子・松尾俊彦・長谷部佳世子・他:むちうち症の調節と輻輳障害.臨眼49:775-778,1995
8)山上明子・岩佐真弓・井上賢治・他:脳脊髄液減少症症例の眼症状の検討.神経眼科38:162-171,2021
9)Capó-Aponte JE, Urosevich TG, Temme LA et al:Visual dysfunctions and symptoms during the subacute stage of blast-induced mild traumatic brain injury. Mil Med 177:804-813, 2012
10)高橋浩一・三浦真弘:髄液瘻に伴う髄液減少症.脊椎脊髄ジャーナル33:871-880,2020
11)片倉知博・中山 幸・篠永正道:脳脊髄液減少症の一例.国際医療福祉大学紀要12:41-44,2007
12)国際頭痛学会・頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第2版.日本頭痛学会誌31:13-188,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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