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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科77巻9号

2023年09月発行

文献概要

特集 第76回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

白内障手術後の眼精疲労に対する0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼の治療効果

著者: 桑原直杜1 貝田智子1 徳永忠俊1 川守田拓志2 神谷和孝23 宮田和典1

所属機関: 1宮田眼科病院 2北里大学医療衛生学部 3北里大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1203 - P.1208

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要約 目的:白内障術後の眼内レンズ(IOL)挿入眼で眼精疲労を自覚する症例をしばしば経験する。有水晶体眼では調節安静位の屈折値の変動(調節微動)が大きい眼精疲労に対して,0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼が有効であることが報告されている。今回,白内障手術後の眼精疲労に対する0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼治療の効果を後ろ向きに検討した。

対象と方法:白内障手術後に長期間持続する,原因が特定できない眼精疲労を自覚し,調節微動が大きい患者を対象とした。調節微動はアコモレフSpeedy-“i”(ライト製作所)を用いて高周波成分(HFC)の出現頻度を測定した。治療は0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼を両眼就寝前1回点眼とした。点眼開始日および評価判定日に,調節微動と,問診による眼精疲労の自覚症状の評価を行った。

結果:症例は6例(男性3例,女性3例)11眼,平均年齢は68.8±5.4歳で,IOLは単焦点を4眼,多焦点を7眼(2焦点2眼,3焦点5眼)に挿入した。点眼開始日は白内障手術後平均6.8±3.0か月,評価判定日は点眼開始後平均1.7±1.2か月であった。点眼開始日に全眼で高値HFCを認め,評価判定日に全眼で高値HFCの減少を認めた。自覚症状の改善があったのは6例中4例(67%)であり,すべて多焦点IOLであった。

結論:白内障手術後のIOL挿入眼の眼精疲労は,0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼で改善する可能性がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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