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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科78巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 今,あらためてコンタクトレンズについて学ぼう!

企画にあたって

著者: 堀裕一

ページ範囲:P.17 - P.17

 現在,コンタクトレンズ装用者はわが国で1500万人を超えたといわれており,装用者の年齢層も小児から高齢者まで幅広くなっています。最近は乱視矯正(トーリック)や老視眼に対する(多焦点)コンタクトレンズ,抗アレルギー剤含有コンタクトレンズなど,新しいコンタクトレンズが市場に出ています。また,わが国でも近視進行抑制コンタクトレンズの治験が始まり,ようやくわが国のコンタクトレンズ診療も世界のトレンドに追いついてきた感があります。

 以前は,コンタクトレンズ診療は眼科の花形であり,診療に携わる先生方の数も多く,コンタクトレンズに関する教材やパンフレット,教育セミナーなどが目白押しでした。しかしながら,現在では日眼総会や臨眼での一部シンポジウムやセミナーが開かれる程度で,日本コンタクトレンズ学会総会などの専門学会に参加しないと,コンタクトレンズに関して勉強する機会が減ってきました。大学病院や教育機関の病院でも,コンタクトレンズを扱わない施設も出てきています。

【総論】

コンタクトレンズの世界のトレンドを知ろう

著者: 高静花

ページ範囲:P.18 - P.22

●コンタクトレンズは視力を矯正するだけではなく,もっとすごい。

●井の中の蛙になってはいけない。常に世界にも目を向けて。

●コンタクトレンズは面白いので,ぜひ興味をもって!

コンタクトレンズの素材について学ぼう

著者: 月山純子

ページ範囲:P.24 - P.30

●初期に比べて,軟らかさと酸素透過率のバランスが取れたシリコーンハイドロゲルレンズ(SHCL)が増えてきた。

●SCL素材の1つである酸素透過性の低い低含水性HEMAは,カラーコンタクトレンズをはじめ,透明なレンズにおいてもまだまだ存在する。

●HCLもSCLも,いかに水濡れ性を高められるかが大切である。

【実際のコンタクトレンズ】

乱視矯正(トーリック)コンタクトレンズの処方

著者: 宮本裕子

ページ範囲:P.32 - P.39

●乱視矯正(トーリック)コンタクトレンズにもHCLとSCLがある。

●乱視矯正(トーリック)SCLを処方しよう。

●乱視矯正(トーリック)CLによる矯正は有益である。

老視眼に対するソフトコンタクトレンズ処方

著者: 樋口裕彦

ページ範囲:P.40 - P.47

●SCLによる老視対策にはいくつかの方法があり,それぞれ一長一短がある。

●長所や短所を理解しておけば,患者に最も適切な方法を提案することは可能である。

●遠近両用SCL処方の際は,あらかじめ見え方の特徴と限界についてよく説明しておく。

カラーコンタクトレンズについて知っておくべきこと

著者: 松澤亜紀子

ページ範囲:P.49 - P.55

●カラーコンタクトレンズには,色素がレンズ表面に露出しているものもある。

●カラーコンタクトレンズ自体の問題や装用者の問題から眼障害が生じる。

●カラーコンタクトレンズのレンズケア指導も大切である。

円錐角膜・不正乱視に対するコンタクトレンズ処方

著者: 糸井素啓

ページ範囲:P.56 - P.61

●不正乱視眼ではThree-point touchが理想であるが,過度にこだわる必要はない。

●円錐角膜では,円錐(角膜突出部)の大きさ・位置に基づいて処方手法を選択する。

●全層角膜移植後では,抜糸前と抜糸後でHCLの処方手法は大きく異なっている。

【合併症】

コンタクトレンズ不耐症を理解しよう

著者: 重安千花

ページ範囲:P.62 - P.68

●コンタクトレンズ(CL)不耐症の主な原因として“contact lens discomfort(CLD)”が注目されている。

●CLDは「CL装用に伴う眼不快感」と訳され,CLの装用時に生じ,CL非装用時には症状が消失または軽減する。

●CLDは疾患名ではなく症状名であるため,ドライアイをはじめとした幅広い疾患により生じる。

コンタクトレンズ関連角膜感染症への対応

著者: 三笘香穂里 ,   近間泰一郎

ページ範囲:P.70 - P.75

●CL関連角膜感染症の原因微生物としては緑膿菌とアカントアメーバが多い。

●CL関連角膜感染症への対応ではCLに関する詳細な問診が重要である。

●眼科定期受診をしていないCLユーザーも多く,啓発活動が重要である。

【新しいコンタクトレンズ】

強膜レンズについて知っておこう

著者: 木内岳

ページ範囲:P.76 - P.82

●強膜レンズは角膜に接触せず,涙液クリアランスを有する大型のHCL。

●不整乱視眼や重症ドライアイなどの疾患眼だけでなく,健常眼への処方も有用。

●高い視力矯正効果,装用感の向上,角膜上皮障害の改善が期待できるが,角膜酸素欠乏に注意が必要。

オルソケラトロジーと多焦点コンタクトレンズによる小児の近視管理

著者: 松村沙衣子

ページ範囲:P.83 - P.91

●オルソKによる近視抑制効果のエビデンスは蓄積されており,低濃度アトロピン点眼の併用によりさらなる抑制効果が得られる。

●オルソKで最も注意を要する合併症は角膜感染症であり,適切なレンズケアを遵守させることが重要である。

●MFSCLは良好な装用感と広範囲な適応度数,簡便性により小児への処方率が増加している。

●小児へのMFSCLの処方には患児の理解度と自立性を必要とする。合併症発生率の点からも使い捨てCLが好ましい。

抗アレルギー剤含有コンタクトレンズについて知っておこう

著者: 土至田宏

ページ範囲:P.92 - P.97

●2021年,抗アレルギー剤含有コンタクトレンズが登場した。

●これに伴い,「単回使用視力補正用色付薬剤含有コンタクトレンズ」という新しいカテゴリーが新設された。

●使用目的と効果は,視力補正とアレルギー性結膜炎を有する患者におけるCL装用時の眼のアレルギー症状の緩和である。

●アレルギー性結膜炎を治療するものではなく,季節前からの装用により症状緩和が期待される。

トリガーフィッシュシステム—眼圧変動測定コンタクトレンズ

著者: 雲井美帆 ,   三木篤也

ページ範囲:P.98 - P.104

●トリガーフィッシュは,自然な体位で24時間眼圧変動を測定できるコンタクトレンズである。

●トリガーフィッシュを用いることで外来診療時間帯に見逃されている夜間の眼圧変動を把握することができる。

●視野,眼圧のデータが少ない例では,トリガーフィッシュ検査が今後の進行予測に有用となる可能性がある。

今月の話題

肥満が引き起こす加齢黄斑変性の発症・増悪メカニズム

著者: 畑匡侑

ページ範囲:P.10 - P.15

肥満では,脂肪組織のみならず,さまざまな臓器に炎症を引き起こし,動脈硬化や悪性腫瘍,さらには加齢黄斑変性(AMD)など多様な疾患の発症に寄与することが明らかになりつつある。本稿では,肥満が慢性炎症を引き起こすメカニズムからAMDに与える影響,そして,肥満改善がAMDに与える影響について,最新の知見を解説する。

連載 Clinical Challenge・46

網膜下索を伴う裂孔不明の胞状網膜剝離の症例

著者: 納富昭司 ,   塩瀬聡美

ページ範囲:P.6 - P.9

症例

患者:62歳,女性

主訴:右視力低下

既往歴:視神経脊髄炎

家族歴:特記事項なし

現病歴:前医にて脊髄炎を伴うアクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎と診断され,ステロイドパルス治療を受けた。1か月後に右視力0.3(矯正不能)に低下し,右視神経炎の所見を認めたため,再びステロイドパルス治療を受け,右視力(0.6)に改善した。その2か月後に再び右視力低下を自覚し,前医を受診した。右眼に裂孔不明の網膜剝離を認め,精査加療目的に当院へ紹介となった。

イチからわかる・すべてがわかる 涙器・涙道マンスリーレクチャー・14

先天鼻涙管閉塞症

著者: 中山知倫

ページ範囲:P.105 - P.109

●小児の流涙症の原因として先天鼻涙管閉塞があり,実臨床で遭遇する機会の多い疾患である。

●流涙症のみならず,涙囊炎や眼瞼皮膚炎を合併することもある。

●高い自然軽快率を持つ。

臨床報告

COVID-19ワクチン接種後にぶどう膜炎を発症した2症例

著者: 神川聖羅 ,   清水美穂 ,   木下貴正 ,   宮本寛知 ,   森潤也 ,   山崎光理 ,   小林賢治 ,   森田崇貴 ,   田中桂樹 ,   今泉寛子 ,   柴田邦子

ページ範囲:P.110 - P.116

要約 目的:COVID-19ワクチン2回目接種後に後眼部ぶどう膜炎を発症した2症例を報告する。

症例1:COVID-19ワクチン接種後に視力低下を自覚した40歳女性。視力は右(1.2),左(0.8),両視神経乳頭の発赤・腫脹,漿液性網膜剝離(SRD)があり,光干渉断層計(OCT)でSRDと脈絡膜肥厚を認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で多数の蛍光漏出と網膜下蛍光貯留,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)で脈絡毛細血管への充盈遅延,多発斑状低蛍光,多発点状蛍光漏出があり,髄液細胞増多を認めた。以上より,Vogt-小柳-原田病と診断し,ステロイドパルス療法を施行して所見は改善し,再発なく経過した。

症例2:COVID-19ワクチン5回目接種後に霧視を自覚した72歳女性。視力は右(0.9),左(0.3),左眼に角膜後面沈着物,前房炎症,硝子体混濁と周辺部網膜に滲出斑があり,FAで血管炎を認めた。41年前に急性網膜壊死(ARN)の既往があり,前房水PCRから水痘帯状疱疹ウイルスが検出され,ARNの再発と診断した。アシクロビル,ステロイド,アスピリン併用療法で所見は改善した。

結論:COVID-19ワクチン接種に伴う免疫反応を契機としてぶどう膜炎を発症する可能性がある。

タクロリムス点眼後に偽樹枝状角膜病変を続発し皮疹なしの眼部帯状疱疹と臨床診断した1例

著者: 石戸岳仁 ,   劉文玲 ,   佐藤慧一 ,   秦野寛

ページ範囲:P.117 - P.122

要約 目的:タクロリムス点眼後に偽樹枝状角膜病変を続発した皮疹なしの眼部帯状疱疹を経験したので報告する。

症例:46歳,女性。主訴は左眼の視力低下。初診時,角膜に点状の上皮欠損を認めThygeson点状表層角膜炎を疑ったが,ヘルペスウイルス属鑑別のための血清補体結合抗体価(CF)は単純ヘルペスウイルス(HSV)4倍未満,水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)16倍であった。タクロリムス点眼開始7日後に,溝がなく隆起性で,terminal bulbを欠くVZV特有の偽樹枝状角膜病変が顕在化したため,抗体価結果を併せて考慮し皮疹なしの眼部帯状疱疹と臨床診断した。治療は6倍希釈PA・ヨード点眼5回/日,アシクロビル眼軟膏5回/日を開始した。虹彩毛様体炎が続発し,バラシクロビル3,000mg/日の内服を開始した。13日後に偽樹枝状角膜病変は消失したが,角膜びらんと虹彩毛様体炎が遷延したため,消炎目的で0.1%フルオロメトロン点眼6回/日を開始し,漸次消炎角膜はほぼ透明化した。

結論:本症例の偽樹枝状角膜炎はタクロリムス点眼に誘発された可能性があると考えられた。同剤はリンパ球を抑制して免疫を修飾するため,投与後の臨床像の変化に注意が必要と考えられた。

COVID-19感染流行前後における当院での患者数,手術件数動態の比較検討

著者: 阪本知瞭 ,   西脇弘一

ページ範囲:P.123 - P.131

要約 目的:COVID-19感染流行による天理よろづ相談所病院(当院)での患者数,手術件数などへの影響を分析する。

方法:当院にて患者・手術など管理システムを使用し,2018年1月1日〜2022年12月31日のデータを用いて全科における外来患者数,眼科入院患者数,手術件数,手術術式ごとの動態を検討した。

結果:眼科は外来患者数の一貫した減少を認めており,同様の傾向をメジャー外科,産婦人科,皮膚科,形成外科で認めた。外来患者,入院患者,初診外来患者数は減少を認めた。硝子体手術は軽度減少傾向にあったが,網膜前膜の手術件数が比較的顕著な減少を認めた。緑内障手術件数に関しては横ばいないしはやや増加傾向があり,濾過手術は減少傾向,流出路再建術は増加を認めた。硝子体注射術に関しては増加傾向にあり,糖尿病黄斑浮腫,網膜静脈閉塞症の件数で顕著な増加を示した。

結論:COVID-19感染流行下では眼科外来患者数は減少し,メジャー外科でも同様の傾向を示した可能性がある。網膜前膜手術は感染流行下では待機的に選択される可能性がある。緑内障手術に関しては,流出路再建術が感染流行下では選択されやすい可能性がある。硝子体注射術は感染流行下であっても増加傾向にあったことから,今後もその傾向は続いてく可能性がある。

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

欧文目次

ページ範囲:P.4 - P.4

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.132 - P.134

アンケート用紙

ページ範囲:P.140 - P.140

次号予告

ページ範囲:P.141 - P.141

あとがき

著者: 黒坂大次郎

ページ範囲:P.142 - P.142

 世界情勢は,ウクライナ危機も目処が立たないうちにパレスチナ問題はますます混迷の度合いを深めている。国内に目を向けると,円安が進み1ドルは150円を突破し,物価高も定着してきてしまった。卵は1パック100円前後から300円前後へと値上がりしたと秘書さんたちは嘆いている。病院内のレストランでは,知らない間にオムライスがメニューから消えた。阪神タイガースも日本一となった。いやこれは当たり前です,慶應義塾高校が甲子園で優勝したと書きなさいと隣の眼が言う。

 さて,眼科関係の医療材料も多くを海外製に依存している。米国からしてみれば,日本に1万5千円で輸出していた材料は,150ドルだったのに今は100ドルにしかならない。保険診療のものであれば,保険点数が物価高に連動して上がるわけではないので,そのうち日本は相手にされなくなるのではと危惧するばかりだ。日本発のものができないと,状況の改善は難しいのではないか。若い世代の奮起を期待したい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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