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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著
ステロイドパルス施行後に眼窩内膿瘍と細菌性眼内炎が明らかになった1例
著者: 磯本翔吾1 宮城清弦1 河野良太1 原田史織1 北岡隆1
所属機関: 1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座眼科・視覚科学分野
ページ範囲:P.1241 - P.1245
文献購入ページに移動症例:37歳,生来健康な男性。右眼疼痛で近医を受診し,ぶどう膜炎の診断でステロイド内服を開始されるも,改善なく近医総合病院を紹介された。眼瞼腫脹,前房蓄膿・フィブリン析出,眼窩CTで外眼筋炎症を認め特発性眼窩炎症の診断でステロイドパルス3クールが施行されたが,その後も炎症増悪があり,長崎大学病院眼科を紹介され受診した。初診時の右視力は光覚弁,著明な前房内フィブリン析出,Bモードエコーで硝子体腔の蜂巣状所見,眼窩MRIで強膜菲薄化と同部に接した腫瘤形成を認め,強膜穿孔が疑われた。強力な免疫抑制下での増悪であったため感染性疾患を疑い,診断的治療として腫瘤部の試験切開を施行した。結膜を切開し眼球赤道部に進むと黄白色腫瘤を認め,被膜を切開すると大量の排膿を認めた。膿瘍を洗浄すると漿液の排出を認めたが,周囲組織の癒着が強く強膜穿孔部の同定は困難であった。培養で肺炎球菌が検出され,眼窩内膿瘍および細菌性眼内炎と診断した。抗菌薬の全身投与により感染制御を図るも経過中に光覚を消失し,根治的治療として眼球摘出術を施行した。
結論:ステロイド投与後に眼窩内膿瘍と細菌性眼内炎の進行を認めた症例を経験した。本症例では発症初期からステロイド内服が開始されており感染徴候がマスクされ診断の遅れにつながった可能性がある。ステロイドを使用するにあたり感染症の十分な鑑別が必要である。
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