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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻10号

2024年10月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

強膜内固定(山根式フランジ法)後に眼内レンズの支持部が結膜から露出し眼内炎を生じた1例

著者: 柚木貢1 木全正嗣1 水口忠1 堀口正之1 伊藤逸毅1

所属機関: 1藤田医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1259 - P.1264

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)強膜内固定術の術後合併症として,IOL支持部の眼外露出による眼内炎が報告されているが,その数は少ない。今回筆者らはIOL支持部が結膜上に露出し,眼内炎に至った1例を経験したので報告する。

症例:60歳,男性。他院でX−3年10月に山根式フランジ法にて右IOL強膜内固定術を施行された。X−2年1月IOL支持部が結膜上に露出したため強膜内に再埋没されたが,同年5月には再露出していた。その後,通院を自己中断した。X年1月右眼痛にて近医を受診し,右眼内炎疑いで藤田医科大学病院(当院)を紹介され受診となった。当院初診時,右矯正視力は0.01,眼圧は29mmHgであった。IOL支持部は6時方向の結膜上に露出し前房蓄膿を認め,眼底は透見不良であった。同日硝子体切除術とIOL摘出術,抗菌薬硝子体内注射を実施した。摘出したIOL支持部には白色沈着物を認め,前房水からはStreptococcus pseudopneumoniaeが検出された。その後,抗菌薬の全身投与と3度の硝子体内注射を実施し,炎症は鎮静化した。術後3か月時点では,右矯正視力0.2,眼圧20mmHgで感染徴候はなかった。術後6か月時点でハードコンタクトレンズによる矯正を行い,右矯正視力は0.6まで改善した。

結論:本症例では山根式フランジ法の術後にIOL支持部が露出し,再埋没術が行われるも再露出により眼内炎が生じた。同様の報告は,術後3か月で支持部露出を伴わない1例,術後6か月で支持部露出を伴う1例がある。今症例は術後2年以上経過するも,支持部露出が下方であったため,また既往に糖尿病があり透析中であったため感染リスクが高かったと考えられた。支持部を露出させない工夫や露出した際の対応について習熟しておく必要がある。

参考文献

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8)Soltau JB, Rothman RF, Budenz DL et al:Risk factors for glaucoma filtering bleb infections. Arch Ophthalmol 118:338-342, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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