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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻10号

2024年10月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著

単純ヘルペス脳炎後の急性網膜壊死の治療寛解3年後に僚眼発症した単純ヘルペスウイルスによる急性網膜壊死

著者: 白彩香1 西尾侑祐1 川原稔己1 須賀亮太1 田内睦大1 鈴木恵理1 仲野裕一郎1 堀純子1

所属機関: 1日本医科大学多摩永山病院眼科

ページ範囲:P.1273 - P.1278

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要約 目的:単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎治療後に急性網膜壊死(ARN)を発症し,治療寛解の3年後に僚眼に重篤な閉塞性血管炎を伴うHSV-ARNを生じた1例を経験したので報告する。

症例:68歳,女性。2020年5月にHSV脳炎の治療歴があった。2020年10月に左視力低下を主訴に日本医科大学多摩永山病院(当院)を受診した。前房水ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でHSVが検出され左眼HSV-ARNと診断した。アシクロビルとプレドニゾロンの全身投与および網膜剝離予防目的で硝子体茎離断術,強膜輪状締結術,シリコーンオイル留置を行い,その後は再燃なく経過していた。2023年4月に右眼の飛蚊症を主訴に当院を受診した。初診時視力は右(0.6),左(0.2)であった。右前房炎症と出血斑の散在,蛍光眼底造影検査でびまん性血管漏出と閉塞性血管炎を認めた。前房水PCR検査でHSVが検出され右眼HSV-ARNと診断した。左眼には再発は認めなかった。アシクロビル全身投与が反応不良であり,ホスカルネットとバラシクロビル投与に変更したが効果不十分であった。ビダラビンとバラシクロビル投与に切り替えたところ,速やかに滲出病変が消退した。第64病日に網膜分離の拡大を認め,水晶体再建術,硝子体茎離断術,強膜輪状締結術,シリコーンオイル留置を行った。右眼の最終視力は光覚弁となった。左眼には再発は認めず矯正視力0.2を維持している。

結論:HSV脳炎とHSV-ARNの寛解から3年後に,僚眼に重篤な閉塞性網膜血管炎を伴う急性網膜壊死を生じた。後発眼でより重篤に進行することがあるため,アシクロビル耐性を念頭に置いた薬剤選択が必要である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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