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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[8] 原著
眼瞼帯状疱疹にぶどう膜炎・髄膜炎を併発した1例
著者: 大坂萌乃1 木崎順一郎1 恩田秀寿1
所属機関: 1昭和大学医学部眼科学講座
ページ範囲:P.1279 - P.1284
文献購入ページに移動症例:55歳,女性。水痘・口唇ヘルペスの既往があり,関節リウマチの治療でメトトレキサートおよびウパダシチニブ内服中であった。右側頭部の鈍痛を自覚し,8日後に右上眼瞼の腫脹と右顔面・口腔内の痺れと感覚麻痺を生じた。増悪傾向のため10日目に昭和大学病院附属東病院眼科を紹介され受診した。初診時矯正視力は両眼1.2であった。右上眼瞼は腫脹・皮下出血を認めたが眼内に炎症所見はなかった。蜂窩織炎を疑い,同日からセファゾリン1g/日の投与を開始したが効果は乏しく,薬剤投与開始から3日目に髄液検査を施行したところ,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でVZVが検出された。また,MRIでは右眼瞼,外直筋,涙腺,海綿静脈洞に造影効果を認め,これらの部位にVZVによる炎症が波及したと判断した。同日よりアシクロビル1,500mg/日の投与を開始し,自覚症状および右上眼瞼の腫脹は改善傾向にあったが,薬剤投与開始の2日後に硝子体混濁を伴う眼炎症所見を認め,前房水PCR検査においてVZV特異的DNAが検出された。抗炎症目的にプレドニゾロン内服30mg/日も併用し,初診時から18日で前房内炎症および硝子体混濁も消退した。
結論:今回,典型的な皮膚所見がなかったことが診断・治療の遅れの一因であった。早期に鑑別診断を行い,治療をすれば炎症が眼内に波及しなかった可能性がある。
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