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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻11号

2024年10月発行

増刊号 6年前の常識は現在の非常識!—AI時代へ向かう今日の眼科医へ

Ⅸ.外眼部・神経眼科・腫瘍など Special Lecture

Minds形式先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン—適切な医療情報が誰でも無料で入手可能になった

著者: 佐々木次壽12

所属機関: 1佐々木眼科 2金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学教室

ページ範囲:P.319 - P.322

文献概要

はじめに

 先天鼻涙管閉塞(congenital nasolacrimal duct obstruction:CNLDO)は,鼻涙管下部の開口部が先天的に開塞している疾患であり1),新生児の6〜20%にみられ,自然治癒率が高い2).このためはじめは保存的治療で経過観察される.しかし,自然治癒しない場合は外科的治療(プロービング)が必要となる.

 さて6年前のCNLDOの常識とは何であろうか.プロービングの至適タイミングに関して議論となっており,涙道内視鏡も小児に対してはまだごく一部の施設でのみ行われるだけであった.CNLDOに総涙小管部のチェックバルブを合併した先天涙囊瘤(congenital dacryocystocele:CDC)は涙囊ヘルニアと呼ばれていた.またそれらの論点に関して系統的にレビューしたガイドラインもなかった.

 そこで上記の論点や課題を解決すべく,日本涙道・涙液学会がmedical information distribution service(Minds)形式の「先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン」3)(以下,GL)を2022年に作成した(表1).Minds形式共通の特徴は,予後に影響するような重要な課題であるクリニカルクエスチョン(clinical question:CQ)に関して,治療成績,合併症,費用対効果および保護者の満足度などに関し同質の文献を収集,各種バイアスを評価し,それぞれの益と害を不偏的に勘案〔系統的レビュー(systematic review:SR)〕してCQに答える形の推奨文をもつことである.GLでは,CNLDOの保存的治療オプション,プロービングのタイミング,涙道内視鏡の適応,プロービング不成功時の治療オプション,先天涙囊瘤の診療方針および近年の話題としてCNLDOと弱視リスクとの関連性4)などについてCQを作成してある.詳細はGL3)を参照いただきたい.

 GLは眼科医以外の医療従事者や患者の保護者にも理解しやすいよう作成され,無料で一般公開されている.またGL作成でみえる化された課題を解決する研究が追加され約5年ごとに更新される.保護者や小児科医などが,GLを読んでから眼科を受診するケースも今後増えるであろう.医師はGLを参考に医療施設の状況,医師の経験,患者や保護者の価値観などを考慮し,保護者と協働して診療を行っていただきたい.

参考文献

1)Young JD, MacEwen CJ:Managing congenital lacrimal obstruction in general practice. BMJ 315:293-296, 1997
2)MacEwen CJ, Young JD:Epiphora during the first year of life. Eye(Lond) 5:596-600, 1991
3)先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン作成委員会:先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン.日眼会誌126:991-1021,2022
ビジョンスクリーナーによる片側性先天鼻涙管閉塞の屈折スクリーニング.臨眼73:787-791,2019
5)Crigler LW:The treatment of congenital dacryocystitis. JAMA 81:23-24, 1923
6)Prokosch V, Prokosch JE, Promesberger J, et al:Bacterial spectrum and antimicrobial susceptibility patterns in acquired and connatal lacrimal duct stenosis. Curr Eye Res 39:1069-1075, 2014
7)Petris C, Liu D:Probing for congenital nasolacrimal duct obstruction. Cochrane Database Syst Rev 7:CD011109, 2017
8)Young JD, MacEwen CJ, Ogston SA:Congenital nasolacrimal duct obstruction in the second year of life:a multicentre trial of management. Eye(Lond) 10:485-491, 1996
9)Kashkouli MB, Kassaee A, Tabatabaee Z:Initial nasolacrimal duct probing in children under age 5:cure rate and factors affecting success. J AAPOS 6:360-363, 2002
10)Matta NS, Silbert DI:High prevalence of amblyopia risk factors in preverbal children with nasolacrimal duct obstruction. J AAPOS 15:350-352, 2011
11)Yoo Y, Yang HK, Kim N, et al:Amblyopia risk factors in congenital nasolacrimal duct obstruction:a longitudinal case-control study. PLoS One 14:e0217802, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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